在日本朝鮮留学生同盟−各地のサークル活動 |
今年も多くの同胞学生が、各地の国立大学をはじめとする日本の大学、専門学校に入学した。夢と希望に満ちあふれた新入生たちを迎える留学同の各種サークルは、彼らのキャンパスライフをいっそう豊かなものにしてくれるに違いない。 日本の大学、専門学校に入学した同胞学生のトンムたち、チュッカハムニダ!(おめでとうございます)。 留学同は日本の大学、専門学校、大学院に学ぶ多くの同胞学生が集う学生団体です。正式名称は在日本朝鮮留学生同盟と言い、1945年9月14日に結成されました。祖国光復後に結成された同胞団体としてはもっとも長い歴史を誇っています。 留学同は各自の個性を大切にし、大衆的で開かれた運営をモットーに、10本部37支部を網羅した全国組織として同胞社会、祖国、民族の発展隆盛のために活動を行っています。 とくに21世紀に入り、民族文化運動と学生生活サポート活動を前面に押し出しながら祖国統一運動と同胞の権利擁護活動に力を入れて活動を繰り広げています。 最近はアジア系外国人学校への大学受験資格を認めようとしない日本政府・文部科学省の民族差別政策に反対する運動を全組織を挙げて行っています。4月からは学校が始まることもあって学内運動に全力を注いでいきます。 各地の留学同で行われているサークル活動は、同胞学生同士が民族的交流を深める大切な役割を果たしています。とくに朝鮮文化と関連したサークルは、彼らが自らのルーツを再確認し、朝鮮人としての自覚を持って学んでいくためのきっかけとなっています。新入生のみなさん、多彩なサークル活動を通して、「もうひとつの大学生活」を探してみませんか。(留学同中央) 直接見て学ぶ歴史(フィールドワークサークルaKt) 私の所属する留学同京都ではスポーツ、朝鮮の民族楽器をはじめ、さまざまなサークル活動を行っているが、そのなかでも活発なのが、フィールドワークサークル「aKt」(アクト)だ。 サークル名は、「ACT」(行動する)の「C」を「コリア」の「K」に変えたもの。「行動を通して物事を理解しよう」という新世代在日コリアン学生の思いが込められている。 活動の目的は、日本各地にある朝鮮ゆかりの地を実際に訪れることによって、その歴史、現存する問題などを直接見て学ぼうというものだ。昨年度からは「未来の朝・日友好」をモットーに掲げ、同胞学生のみならず、多くの日本人学生にも参加を呼びかけている。 甲陽園トンネル(兵庫・西宮)をはじめとする強制連行、強制労働跡地を訪ねたり、在日と日本の学生同士の交流を深めるイベントを行ったりした昨年の活動中、もっとも多い30人の参加者を募ることができたのは、同年6月に行われた「ウトロフィールドワーク」だった。 ほとんどが京都に住み、また学びながらもウトロを訪れたことがなかった参加者たちは、ウトロに在住する1世同胞の案内のもと、実際に現地を歩きながらこの問題の本質について考えた。朝鮮人部落だからといって差別され、90年代に入って初めて水道が引かれたこと、立ち退き問題など、戦前から引き続く民族差別との闘いの歴史を痛いほど体感することができた。同胞学生はもちろんのこと、日本人学生も「日本の植民地支配の清算がいまだになされていないということにがく然とした。憤りを感じる」と感想を述べていた。 今年も「aKt」の活動が在日同胞学生と日本人学生がともに手を取り合いながら問題意識を深め、歴史認識を共有する第一歩となるよう努力していきたい。(鄭仁大、立命館大学2年) 在日社会読み解く契機に−研究サークル科樂堂 留学同東京・渋世支部には不定期に個人が読んだ「文」の感想をホームページの掲示板に書き込むことを主な活動内容とする「文樂部」というサークルがある。本という体裁を取っていなくても「文(百科事典からトイレの落書きまで)」を見て感じたことを自分の「コトバ」で語ろうというもので、掲示板上のみでの運営はある意味、「閉ざされた」環境の中での活動となっていた。 こうした中、「複数の人がひとつの場でともに感想を述べ合うことによって、書籍の内容をより客観的に自分のものにできる場を」との声が上がり、昨年6月に結成されたのが「科樂堂」だった。現在は指定された図書を期間内に読み終えたメンバーが月に1度集まり、自作のレジュメや各種資料を用いた説明を加えながら感想を述べ合っている。 今までに指定された図書は、「『日本人』の境界」(小熊英二著)、梶村秀樹著作集第6巻「在日朝鮮人論」、「なぜ書き続けてきたか、なぜ沈黙してきたか」(金時鐘、金石範、文京洙著)、「現代思想11月臨時増刊『日朝関係』」、「半難民の位置から」(徐京植著)、「北朝鮮本をどう読むか」(和田春樹、高崎宗司編著)の6冊。 在日、朝鮮半島の歴史関連書物が主だが、今後はそれらを軸に据えながらもより幅広い分野に挑戦し、それらを通して在日同胞社会への理解をいっそう深めていきたい。(宋南郷、明治学院大3年) 「民族」肌で感じる空間−文化サークル三世打鈴 朝鮮民族はその時代ごとの逆境の身の上(シンセ)を語り継ぎ、歌い、踊りそして騒ぐ(タリョン)ことで乗り切ってきた。祖先を取り巻いていた苦難の逆境とは違い、私たち新しい世代を取り巻く「逆風」が見えにくくなっている今だからこそ、民族性を守り継いでいこうとの思いを「身世打鈴」に込めていきたい―そのような思いから留学同大阪では、民族伝統文化と現代音楽の融合による文化公演を行うバンド、「三世打鈴」(サムセタリョン)を結成した。 昨年12月に初ライブが行われた大阪・なんばロケッツ会場は、多くの日本人学生を含む170余人の観客で満ちあふれた。地元同胞からのメッセージ、在日朝鮮史などをショートフィルムにまとめた映像で始まったライブは、詩の朗読、女声独唱、朝鮮の旋律を生かしたバンド演奏などで最高潮に達した。最後は「麦畑、海、祭り」などといった朝鮮の原風景から派生したイメージを、サムルノリとロックという新旧の音を使い表現した。公演は、民族的つながりや帰属意識というものが感じにくい日本で、若い世代がそれらを肌で感じることのできる空間となったに違いない。 1世が船を作り、2世が羅針盤を手に舵を取り、そして今まさに新境地へとたどり着こうとしている3世の私たち。これからも「民族」を土壌に自由な発想を生かした音楽の新しい形を通して、在日同胞の未来像を表現していきたい。(崔明秀、大阪芸術大3年) [朝鮮新報 2003.4.12] |