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ハルモニの告発が持つ重み

 22年前、作家の千田夏光(故人)さんにインタビューしたことがある。千田さんは「従軍慰安婦・慶子」など80年代初から日本軍による性奴隷問題に注目し文学作品として発表してきた。記者が「従軍慰安婦」のことを具体的に知ったのも、千田さんの作品からであった。

 しかし、当時、日本社会では「慰安婦」問題はまったくと言っていいほど知られていなかった。「慰安婦」問題が広く知られるようになったのは、90年代に入り、直接の被害者である金学順さんが名乗り出て日本の罪状を明らかにしてからである。その後、各国から多くの被害者が半世紀の沈黙を破り、次々と証言するようになった。

 千田さんの仕事はひじょうに意義が大きく高く評価されるべきものだ。しかし、あくまでもフィクションという形での「告発」だった。90年代以降の「慰安婦」問題の広がりは、当事者による実体験をもとにした告発が持つ重さを改めて感じさせる。

 本紙に3回にわたって国連人権委員会の報告を寄せてくれた宋恵淑さんは、「『従軍慰安婦』はJugun Ianfu≠ニして、もはや『国連公用語』となったと言ってもいい」と、「慰安婦」問題が国際的に大きな関心事となっていることを伝えてくれた。しかし、加害の当事国である日本社会はどうであろうか。21世紀にはいると、「慰安婦」問題は過去のことであったかのように、一般的にはまったく無関心になってしまった。

 南朝鮮で「慰安婦」問題に取り組むある女性が「責任逃れを続ける日本政府を相手にしてもらちがあかない」と不満をあらわにしているという話を聞いた。

 日本政府は証言者がすべていなくなるのを何もせずにじっと待っている。

 被害者のハルモニたちが1人、また1人と亡くなっていく現実の前で、報道に携わる者の1人として、その責務を強く感じさせられる。(徹)

[朝鮮新報 2003.5.2]