朝鮮学校を支援する新潟県民の会、処遇改善求め県弁護士会に意見書 |
日本市民らによる「朝鮮学校を支援する新潟県民の会」と新潟朝鮮初中級学校はこのほど、日本政府の差別政策によって同校が強いられている経済的、精神的負担をまとめた意見書を作成し、同弁護士会に提出した。両団体は98年2月に日本弁護士連合会が朝鮮学校差別是正を勧告したのを受け00年2月、県弁護士会に県や市に対応を求める人権救済申し立てをしている。意見書は新潟の現状を具体的に知りたいという県弁護士会の要望を受け作成されたもの。日弁連勧告を実現するための方法論として注目される。 日弁連勧告受け
「県民の会」は94年、新潟初中の保護者が同校の処遇改善を求める姿に触発され日本市民らを中心に結成された。朝鮮学校を支援する運動を県民自らの課題と位置付け、県下自治体での議会決議、署名、体育館改築のカンパ、各地の支援団体をつなげるネットワーク作りを進めてきた。 意見書は45ページからなる。「当事者の声」「はじめに」「民族教育の歴史」「新潟初中の法的地位」「朝鮮学校の法的処遇の原則」「朝鮮学校の現状」「関係者の声」の7章で構成されており、執筆は「県民の会」代表の多賀秀敏・早稲田大教授をはじめ成嶋隆・新潟大教授、小山正明氏、古泉正栄氏、足立定夫弁護士、李辰和・新潟初中校長が担当した。 新潟における朝鮮学校差別に照準を合わせているのが特徴だ。例えば助成面。日弁連は朝鮮学校に対して、勧告書では外国人学校の振興助成法が制定されるまで私立学校と同等の助成を、調査報告書では義務教育課程にあたる初中級学校に対しては国、公立小中と同額の助成の支給を求めたが、全国的には私立の1割水準に留まっている。 意見書は学費、教職員の待遇面で新潟初中と日本の公、私立学校の間にどれだけの差があるのか、数字をあげ対比した。公立学校の場合、1月に給食、図書費にかかる2000円を納めればいいが、新潟初中の場合、初級部で2万7000円、中級部で3万4000円の負担。寄宿舎生は数千円上乗せされる。保護者が9年間に収める金額は日本の公立校に比べて300万円近い開きが生じることも判明した。 新潟県が新潟初中に支給する補助金は3万5000円、新潟市は2万8000円(年額)。朝鮮学校に対する補助は自治体によって差があるが、新潟のそれは全国平均(8万円、都道府県レベル)の半額にも満たない。意見書は他の都道府県、市区町村が朝鮮学校に支給している補助金の金額一覧と平均額を新潟のそれと比較した資料を添付。「教育の機会均等、朝鮮学校の歴史的経緯や地域で果たす役割の大きさを考えた場合、もっと積極的に取り組む必要がある」と対応を促した。 巻頭に保護者の声 巻頭に「当事者の声」の章を設け、新潟初中の生徒や保護者、卒業生の声を掲載。差別の深刻さをアピールしている。 中3の金未玲さん(中3)は、制服のチマ・チョゴリで通学していた際、「もう一度戦争するか朝鮮人!」と暴言を吐かれ傷ついた気持ちを、4人の子どもを通わせている日本人保護者の木村由美子さんは、13年前に夫を交通事故で亡くした後、経済的な理由で、長女を日本学校へ送らざるをえなかった苦悩を吐露した。 卒業生で朝鮮学校教員の金好順さんは、生徒数減少に危機感を募らせる。子どもたちの夢は広がるのに、現状は大きな難問が山積していると述べながら、「子どもたちが日本・国際社会で生きていけるよう一刻も早く処遇改善されることを願う」と訴えた。 歴史的経緯も 日弁連勧告が出た後、子どもの権利委員会、自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会、社会権規約委員会など国連の条約審査機関で朝鮮学校差別是正勧告が続けて出されている。これらの内容も盛り込み、日本政府の差別政策が世界の常識とかけ離れていることを浮き立たせた。在日同胞が民族教育を始めた背景に日本の植民地支配があることも丁寧に扱っている。 「創氏改名、日本語の強制、天皇崇拝の強制などは、民族を民族たらしめる要素を一つひとつ破壊していった行為にほかならない。…日本政府が国連や日弁連などから勧告を受けながら、厚顔としか言いようのないほど対応が鈍いのは、精神的苦痛と経済的負担から一人ひとりがあきらめて自然に消滅するのを待っているからだ」(「はじめに」)(張慧純記者) [朝鮮新報 2003.1.14] |