嫌がらせは人権侵害行為−名古屋弁護士会の弁護士ら愛知中高を訪問 |
名古屋弁護士会に所属する弁護士ら22人が15日、愛知朝鮮中高級学校を訪問した。昨年9月の朝・日首脳会談以後、朝鮮学校生徒に対する悪質な暴言、暴行が続いている中、生徒と学校が置かれている現況を把握するために行われたもの。この日の訪問には、「名古屋三菱朝鮮女子挺身勤労隊訴訟を支援する会」のメンバーと名古屋大学法学部の学生らも参加した。 今後も交流深め
学校を訪問した弁護士らはまず、高級部の授業を参観した。メンバーのほとんどが朝鮮学校を訪問するのは初めてということもあり、日本語、英語、数学などの授業を参観しながら、生徒の教科書を手にとって見たりする参加者も多かった。 授業参観に続き、生徒たちとの懇談会が持たれた。 懇談会では、実際に暴行、暴言の被害を受けた生徒らが、「下校途中、50歳くらいの男の人に『朝鮮人死ね』と言われ怖くて逃げた」などと証言。また、昨年9月17日、女生徒が電車を降りようとしたところ、50代の男性に「朝鮮人来い」と言われ制服のチマ・チョゴリのスカートを強く引っ張られたなど、その他の暴行、暴言についての説明もなされた。 懇談会に参加したメンバーらは、「寄宿舎に入ってまで朝鮮学校に通うのはなぜ?」「学校規模での地域との交流はあるのか」などの質問を投げかけながら、「今もチョゴリを着られないということ自体が異常な事態」「拉致とはなんら関係のない在日朝鮮人が被害を受けている問題について、弁護士会として今後も取り組んでいきたい」などと話していた。 メンバーは生徒が準備した小公演を観覧した後、同校教員との懇談会を行った。 教員との懇談会では、定期券や高体連加入、大学受験資格など朝鮮学校生徒らがこれまで被ってきた不当な差別についての説明がなされた。また、今後もこうした活動を積み重ねながら、交流を深めていくことで一致した。 名古屋大学の瀬川智子さんと板倉しのぶさんは、「これまで朝鮮学校については良くも悪くもまったく知らず、漠然としたイメージしかなかった。今日、朝鮮学校を訪問して朝鮮の人が朝鮮人として生きていくのは、日本人が日本人らしく生きるのと一緒だと思った。生徒たちに対する人権侵害は大きな問題だ」と話していた。 籠橋隆明弁護士は、「今回の訪問は、名古屋弁護士会の人権擁護委員会が動いたということで意義のあること。在日朝鮮人に対する人権侵害は昔に比べ表面的には少なくなっているかもしれないが、生徒たちがチョゴリを着られない現実、またさまざまな差別で困っているのは事実であり、こうしたことを一つひとつ整理して解決しなければならない。本来なら日本政府が政策的に在日朝鮮人の人権を守らなければならない。しかし現時点ではそうなっていないので、さまざまな活動を通じて今後も働きかけていきたい」と述べた。 東京や大阪でも 今回の学校訪問は、川口創弁護士を中心とした「青年法律家協会あいち」の有志らが昨年から取り組んできた活動の一環として行われた。 川口弁護士らは、昨年10月25日に総聯愛知県本部、28日に学校と連絡を取り、学校への聞き取りを申し入れ、11月6日に初めての聞き取り調査を行った。その後も数回、学校に足を運びながら聞き取りを行う一方、11月19日には名古屋弁護士会人権擁護委員会に要請書を提出。12月18日に名古屋弁護士会の会長声明が発表された。 「朝鮮学校の生徒たちと接する中で、彼らの未来を光あるものに変えていきたいと強く感じるようになった。この問題に取り組むにあたっては、気負いよりも隣人として当然のことだと思ってやっている。また、各地にいる同期の弁護士たちとも密に連絡を取り合い、広範囲に活動を展開していきたい」と、川口弁護士は語った。 朝鮮学校問題に取り組むこうした若手弁護士たちの活動は、東京や大阪、新潟などでも展開されている。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2003.1.21] |