国際法の視点から人権救済 |
首相への日弁連勧告を踏まえ 日本の朝鮮植民地支配時代に発生した朝鮮人強制連行、強制労働問題について日本弁護士連合会は昨年10月、日本に住む被害者およびその遺族に対して、国際法の視点から人権を救済し、尊厳を回復させていくべきことを小泉首相に勧告した。これまでこの問題は、日本の国内法に基づき論議される傾向があり、ともすれば日本の朝鮮植民地支配を合法とする前提での論議となっていた。しかし、この問題は他民族に対する重大な奴隷行為であることから、国際法の視点から見ることが不可欠だ。それによって問題点を明確にすることができる。とりわけ、「不幸な過去を清算」し「関係を樹立」することを確認し合った朝・日「平壌宣言」(昨年9月17日調印)以降、日本が過去の清算をどのように行うべきかが問われている。そこで今号から、日弁連の勧告を踏まえ、朝鮮人強制連行、強制労働問題について長期連載する。 真相究明、謝罪、補償を
日弁連の勧告は、日本の植民地支配時代に日本国内の鉱山や建設現場に強制連行された在日朝鮮人とその遺族の人権救済申し立てについて、小泉首相と連行先の2企業に対し、真相究明と謝罪、補償を求めたものだ。国際法と近年の国連人権委員会の最先端研究を取り入れ、約5年6カ月にわたる調査を経て作成された。 ここで注目されるのは、国際法の視点から朝鮮人強制連行、強制労働問題に関する見解を指摘、日本が当時批准した条約に違反し、強制連行者は奴隷との視点で問題点を示したことだ。 前述のようにこの問題を日本の国内法に照らして論議すると、例えば「日本の実定法に基づく合法的行為」「強制連行はなかった」などの声が上がることがある。そのため入口から接点を見出すことができず、平行線をたどることも少なくなかった。だが、国際法の視点だと、「強制労働に関する条約」、奴隷制度の禁止(国際慣習法)、「人道に対する罪」に違反する人権侵害行為にあたると規定できる。そして、ドイツの前例を参考に対処方法も見えてくる。 特恵かつ優遇を 朝鮮人強制連行、強制労働問題は決して過去の問題ではない。在日朝鮮人問題が発生した根源に起因し、奴隷状態であった在日朝鮮人とその子孫に対する差別問題がいまだに解消されておらず、そのような状況は在日朝鮮人以外に存在しないからだ。 それゆえに2000年4月に再開された朝・日国交正常化会談で朝鮮側代表は、在日朝鮮人の「法的地位問題」は「日本のわが国に対する軍事占領と前代未聞の占領統治」によって生じた問題であり、民族差別の中止、朝鮮国籍の認定、そして「特恵的かつ優遇的な人倫道徳および法的措置をこうじるべき」(記者会見報道)と述べた。このことは平壌宣言第2条の「在日朝鮮人の地位問題」として引き継がれた。 未来の開拓のキーワード また、強制連行、強制労働問題同様、在日朝鮮人の地位問題も国際法の視点から論議を重ね、地位を確立していくべきだとの声が高まっている。在日朝鮮人は外国人ではあるが、外国人としての当然の権利も、また一般外国人と異なる歴史的条件も無視され、不当な扱いを受けているからだ。 例えば、民族教育の権利について言えば、朝鮮学校は現在、日本の学校教育法上の「一条校」ではないとの理由で、学ぶ権利が侵害されているが、これは国際法(国際人権規約や子どもの権利条約など)違反である。国際法に基づき日本政府が民族教育の諸権利を保障すれば、助成金の拡大、朝鮮高級学校卒業生の日本の国立大学入学(受験)資格認定など、さまざまな権利が保障されることになる。ほかにも、住居の入居差別問題、「外国人登録証」の常時携帯問題など、解消されるべき差別問題は少なくない。 在日朝鮮人の地位問題については、「平壌宣言」を通じて「国交正常化会談で誠実に協議する」とした。国際法の観点から追及していくことが求められているというわけだ。 こうして見ると朝鮮人強制連行、強制労働問題には、在日同胞社会の未来を開拓していくためのキーワードも隠されており、その解決こそ新たな突破口となろう。(羅基哲記者、監修=朝鮮人強制連行真相調査団) [朝鮮新報 2003.1.21] |