2003年 朝鮮学校の権利課題 |
民族教育は国連の各種人権条約、日本国憲法で認められている権利だが、日本政府が朝鮮学校を正規の学校として認めていないことからさまざまな差別を強いられている。今後、解決が急がれるおもな権利課題を整理した。 公的助成−私立の10分の1、日弁連も「私立以上」と勧告 朝鮮学校は、日本の国公私立学校に支給される各種公的助成の対象から外されている。 私立学校振興助成法は、助成の対象を学校教育法に定める「1条校」としているため、各種学校である朝鮮学校は、同法の主要な補助である、第4条(大学および高等専門学校に対する研究、教育に関する経常経費の2分の1以内の補助)、第8条(学校法人が行うその学資の貸与事業についての助成)、第9条(学校法人に対する都道府県の補助に対する補助の一部国庫負担)に定める助成金の対象外だ。 私学助成の金額は、都道府県によって異なるが、2001年度の運営費補助金は1人当たり全国平均で、高校30万1821円、中学25万7269円、小学23万5602円、幼稚園14万2923円(文部科学省私学助成課調べ)。各自治体は朝鮮学校に対する独自の助成制度を設けているが、私立学校に比べ全国的に10分の1程度に過ぎない。 日本弁護士連合会は98年2月、現行の私学助成制度は、「1条校」と非「1条校」との間に不平等を生み、「間接的に日本国に在住する外国人の自国および自己の民族文化を保持することを妨げ、日本国の教育を受けることを押しつけることになっている」として、「外国人学校の振興助成に関する立法措置がなされるまで、少なくとも私立学校振興助成法と同等以上の助成金が交付されるよう処置を取るべきだ」と日本政府に是正を勧告した。 大学入学資格−国立、一貫して拒否、公私立の半数は認定 文部科学省は朝鮮学校が学校教育法第1条に定める学校(「1条校」)ではないという口実をもって、朝鮮学校出身者の大学受験資格を認めていない。このような日本政府の立場を踏襲し、すべての国立大学と公私立大学の一部も受験資格を拒否している。 よって、日本の大学への入学を希望する朝高出身者は、大学入学資格検定(大検)に合格するか、朝高生の編入、入学を認めている日本の通信制高校で高卒資格を取得し、大学への受験資格を得ている。この差別について日本弁護士連合会は1998年2月、「重大な人権侵害」と断定し、首相、文部大臣(当時)、国立大学学長らに差別是正を勧告した。国連・社会権規約委員会も昨年8月、朝鮮学校を正式に認可して財政補助とその卒業による大学入学資格を与えるよう日本政府に勧告している。しかし、日本政府は、「外国人学校は大検を受検できることとされている」(大島令子衆院議員の質問書に対する答弁書)と差別解消の意思を見せていない。 一方、朝高出身者に受験資格を認める公私立大学は年々増えており現在34の公立大、228の私立大が独自の判断で朝鮮学校出身者に門戸を開いている(「民族学校の処遇改善を求める全国連絡協議会」調査、00年)。 指定寄付金−インター、中華など他の外国人学校は認める、阪神大震災時は特例 朝鮮学校は、税制上優遇される「指定寄付金」の適用からも外されている。 大蔵省告示154号によると、「1条校に相当する内容の教育を行い、その教育を行うことについて相当の理由があると所轄庁(各都道府県)が認める」各種学校に対しては、学校改築などの寄付金が個人の場合は所得から控除され、法人は全額損金に参入することが認められている。今まで外国人学校への指定寄付金は、横浜、西町(東京都)、福岡の各インターナショナル・スクール、東京韓国学園、カナディアンアカデミー(神戸市)、アメリカンスクールインジャパン(東京都)、東京横浜独逸学園(横浜市)が認められたが、朝鮮学校は除外された。 最近では96年、山口朝鮮学園が下関朝鮮初中級学校増改築工事の際に申請したが、担当省でもない文部省(当時)が「認めることは適用ではない」とする学術国際局名義の文書を出し、大蔵省が決定を出す前に封じ手を打ったことがある。 阪神・淡路大震災の際には1995年3月から2年間、被害の復旧に限って指定寄付金を認める特例が設けられ、朝鮮学校を含む兵庫県内の外国人学校が認められた。 [朝鮮新報 2003.1.28] |