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脅し、だましも「強制」

 朝鮮人強制連行という用語自体は当時から使われていたわけではない。1960年代から使用されるようになった歴史用語である。だからと言って、強制連行という用語が当時なかったからそれ自体もなかったという論理は通じない。「慰安婦被害者はいい仕事があると着いてきたので強制連行ではない」「1932年頃の、国家総動員法の前なので強制連行ではない」(新しい歴史教科書を作る会)などの主張もしかり。そこでまず、朝鮮人強制連行、強制労働の概念から見てみよう。

 日弁連の勧告では、強制連行という用語の「強制」という意味について、「肉体的、精神的強制を含むもので、この概念は遅くとも19世紀末には国際的に、20世紀初頭には国内的に確立されていた」と規定した。

 1905年当時の国際法を分析すると、「強制を肉体的強制に限定する論議は少なく、強制は肉体的強制のみならず精神的強制を含むと考えられていた」(坂元茂樹「関西大学法学論集」第44巻4.5合弁号、1995年1月)。日本の国内法も、「必ずしも身体に対する侵害たることを要せず、財産名誉に対する侵害を以て脅迫の場合をも包含するものとす」(「大日本百科辞書法律大辞典」、同文館、1909年)としている。

 敗戦後の日本政府の見解も同じである。1993年5月3日の参議院予算委員会では、「慰安婦」問題の「強制というのはどのような内容」であるかという質問(清水澄子議員)に対し、「単に物理的に強制を加えるということのみならず、脅かしてといいますか、畏怖させてこういう方法を本人の自由な意思に反してある種の行為をさせた、そういう場合も広く含むというふうに私どもは考えております」(谷野作太郎内閣官房内閣外政審議室長)と答弁している。

 すなわち、「強制」を物理的な強制に限定することなく、「本人の自由な意思に反して」行われた場合も含めている。

 ちなみに慰安婦問題についても、慰安所が開設された後の1937年の日本大審院(現在の最高裁に相当)では、日本から女性をだまして中国・上海の海軍慰安所に連れて行った日本人経営者に対し、有罪判決(略取・誘拐罪)を下している。この行為自体が強制連行であったことを裏付けるものだ。

 こうして見ると、「強制」とは、肉体的および精神的強制を含むものと規定して異論はないといえよう。(羅基哲記者、監修=朝鮮人強制連行真相調査団)

[朝鮮新報 2003.1.31]