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そこが知りたいQ&A−大学受験資格アジア系学校、なぜ認めない?

 Q 文部科学省がアジア系の外国人学校を除き、インターナショナル・スクール(以下インター)のみに日本の高校、国公立大学の受験資格を認める方針だと聞いたが?

 A そうだ。2月21日付の朝日新聞が1面トップで文科省が民族学校を認めない方向で検討していると報じ明らかになった。同日午後、兵庫県外国人学校協議会の林同春会長らが池坊保子政務官に事実関係を確認したところ、省内や与党の間で認識が一致していないことや朝鮮半島情勢をめぐる諸事情から、「今の状況だと難しい」と伝えたことから「認めず」の方針が確定的となった。

 Q 当初から「アジア系排除」だったのか。

 A 首相の諮問機関である総合規制改革会議(議長=宮内義彦・オリックス会長)が01年12月に発表した第一次答申で初めて明らかになった。答申を受け、政府は翌02年3月に「規制改革推進3カ年計画」を閣議決定し、今年3月までにインター卒業生には「大学や高等学校に入学する機会を拡大する」とした。背景には子どもを外国人学校に送る国会議員や対日投資を誘致したい経済界の強い要望があった。

 しかし、文面を見る限りインターの定義ははっきりしていなかった。文科省が「他の外国人学校をどうするのかを検討中」(大学課法規係)との立場を繰り返すなか、決定まで2カ月を切った今年1月16日、大阪、広島、愛知の朝鮮学校関係者と日本市民らが朝鮮学校の処遇改善を求める約24万人分の署名を河村建夫副大臣に提出。席上、河村副大臣が「朝鮮・中華学校もインターと一緒に認められるべきだと思う」と前向きな見解を示したことから期待が広がっていた。

 Q インターだけというが具体的にどのような形で認めようとしているのか。

 A 文科省が想定しているインターとは、インターナショナルスクール、国際学校と名を冠し、複数の国籍の生徒が席を並べ英語で教育を行う教育機関だ。

 同省は「一定水準」にあると認証されたインターの卒業生について、「(日本の)高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」と指定して、受験資格を付与することを告示に明記するという。

 ここで言う「一定水準」とは、米国のWASC(西部地域学校大学協会)や英国のECIS(ヨーロッパ国際学校協議会)などの認証を受けた水準を想定している。日本の主なインターは、その認証を受けている。すでに日本政府は国際バカロレア、アビトゥア、バカロレアなど欧米で認められている大学入学資格取得者には大学受験の道を開いてきたが、今回の方針もその延長線上にある。

 ちなみに、昨年12月に発表された総合規制改革会議の第2次答申は、「インターについては、その定義を明確化した上で、学校教育法第1条に基づく私立学校に準じた取扱いとなるよう各種の支援措置が取られるべきである」と、3月の閣議決定からさらに踏み込んだ内容になっている。

 Q 今回の方針の狙いはなに?

 A 文科省の方針は、「国家権力による公然とした差別」と激しい批判を買っている。

 それは、戦後朝鮮学校を一貫して差別してきた日本政府が、ついに公然と差別を言い放ったからだ。

 日本政府は1948年、「学校閉鎖令」を出し、日本の植民地支配によって自らの言葉を奪われた在日朝鮮人が民族教育を行い、享受する権利を踏み潰した。その後同胞らが朝鮮学校を再建し、各種学校の認可を取り始めるや、認可権を持つ都道府県知事に対して「朝鮮人学校を各種学校として認可すべきでない」とする文部省事務次官通達を出した(65年)。すべての朝鮮学校が各種学校の認可を取得するや、今度は「各種学校」を盾に公的助成や大学受験資格を否定した。

 つまり今回の受験資格問題は、朝鮮学校に対する日本政府の一貫した差別を象徴するものであり、それを認めないということは今後も「差別を続ける」という意思をはっきり示したも同然だ。

 学校教育法下において学校の種類は大きく「1条校」「専修学校」「各種学校」に分けられるが、朝鮮学校などの外国人学校はもっとも低い「各種学校」の地位に追いやられてきた。

 そして文科省は今回、さらに外国人学校を区分けし、アジア系、とくに朝鮮学校への差別を固定化しようとしているのだ。

 Q 3月中に決定すると言うが、今後どうすべきなのか。

 A 日本政府の政策の誤りは、内外で再三指摘されてきた。日本弁護士連合会は98年2月、外国人学校出身者に大学受験資格が認められていない問題は公的助成と並び「重大な人権侵害」だとして首相、文部大臣(当時)あてに勧告書を提出。国連の子どもの権利委員会、人種差別撤廃委員会、社会権規約委員会も差別是正を促してきた。国立大学は文科省方針を踏襲し、受験資格を認めてないが、262校の公私立大は独自の判断で受験資格を認めている。

 このように、今回の方針は誰が見ても明らかな差別で、理論的、法技術論的にも矛盾、無理が生じる。すべての外国人学校に公平に門戸を開放しなければならない。

 受験資格問題でさらに明確になった日本政府の誤った政策を追及し、転換を促す世論作りが求められている。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2003.3.7]