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民族学校出身者の受験資格を求める国立大教職員の声明

 946人の国立大学教職員が賛同し、11日に発表された声明の全文は次の通り。

 2月21日付「朝日新聞」の記事によれば、文部科学省は、国立大学の受験資格が認められていない外国人学校の中で欧米系のインターナショナルスクールの卒業生にのみ受験資格を与え、朝鮮学校、韓国学園、中華学校などのアジア系外国人学校(民族学校)には認めない方針を明らかにしました。

 私たちは、こうした「方針」が現実化するならば、それはあからさまな民族差別であると考えます。すでに国立大学においても「外国において、学校教育における12年の課程を修了した者又はこれに準ずる者」の受験資格を認めているにもかかわらず、日本国内の民族学校で「学校教育における12年の課程を修了した者」の受験資格を認めず、事前に大検(大学入学資格検定規程)への合格を求めていること自体が不合理なことです。また、国立大学が受験資格を認めていない一方で、すでに半数以上の公立、私立大学は民族学校を含む外国人学校出身者の受験資格を認めています。1999年以降、大検の受験資格緩和などの措置がとられましたが、民族学校出身者が著しく不利な状況に置かれていることに変わりはありません。これまでにもそれぞれの大学がこうした状況を改善しようとした時に、「文部科学省の意向」が大きく立ちはだかってきましたが、欧米系のインターナショナルスクールだけを優遇しようとする今回の「方針」にはあらためて驚きを禁じえません。

 日本政府が1994年に批准した「子どもの権利条約」では、「高等教育を、すべての適当な方法により、能力に基づいてすべての者がアクセスできるものとすること」(第28条)、「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」(第30条)と規定しています。民族学校出身者の受験資格を認めないことは明らかに条約違反です。

 しかも、今回の「方針」は、「教育の国際化」という趨勢の中で、大学入試センター試験の外国語科目として英、独、仏の他に中国語(1997年度から)と朝鮮語(2002年度から)が設けられてきた流れにも逆行しています。いまここでアジア系外国人学校出身者を排除して欧米系のインターナショナルスクール出身者だけに受験機会の拡大を認めるというのは、恣意的な権力の行使であり、真の意味での「教育の国際化」に反するものといわざるを得ません。「教育の国際化」とは、欧米の人々と席を並べて対話することだけを意味しているのでしょうか? 植民地支配と侵略戦争という日本の歴史的責任が問われざるを得ないアジアの人々との関係を棚上げにして進められる「教育の国際化」とは、一体何なのでしょうか?

 私たちは国立大学教職員として、自分たちがこの問題に責任ある立場に置かれていると考えます。そうであるからこそ、文部科学省の政治的判断に対して、大きな危惧と疑念を抱かざるをえません。

 私たちは民族差別の「加担者」になることを拒否します。そして、以下のことを文部科学大臣に要求します。

 1、インターナショナルスクール出身者と同様、民族学校出身者に対しても国立大学への受験資格を認めるための法的措置をとること。

 2、1が困難な場合、民族学校出身者の受験資格認定は各大学の自主的な判断に任せることを公に声明すること。

 2003年3月2日

 呼びかけ人(50音順、3日現在)

 出水薫(九州大学)、鵜飼哲(一橋大学)、川島真(北海道大学)、駒込武、(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、杉原達(大阪大学)、瀬地山角(東京大学)、高橋哲哉(東京大学)、竹沢泰子(京都大学)、鶴園裕(金沢大学)、冨山一郎(大阪大学)、中野敏男(東京外国語大学)、水野直樹(京都大学)、安井三吉(神戸大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学)

[朝鮮新報 2003.3.13]