top_rogo.gif (16396 bytes)

そこが知りたいQ&A−インターのみに大学受験資格、無認可でも認められるの?

 Q 文部科学省は6日、米英の学校評価教育機関の認定を受けたインターナショナルスクール(以下インター)出身者に大学受験資格を認めると発表したが、その中に無認可校が含まれているというのは本当か。

 A そうだ。文科省が大学受験資格を認めたのは、米国のWASC(西部地域学校大学協会)、英国のACSI(国際クリスチャンスクール協会)、ECIS(インターナショナルスクール欧州協議会)の認定を受けている16校のインターだ。すでに日本政府は、日本にある欧米系の外国人学校の大学受験資格問題を解決するため、国際バカロレア、仏バカロレア合格者、独アビトゥア合格者には大学受験資格を認めてきた。

 外国人学校を直接認めるのではなく、その合格者が本国の大学入学資格を持っていることに注目し資格を与えてきたわけだが、今回は違う。特定の外国人学校に大学受験資格を認める初のケースだ。

 決定の恩恵を受けるのは、国際バカロレアなど欧米の大学受験資格をもたないインターだ。東北、北海道インター、アメリカンスクール・インジャパン(東京都調布市)、コロンビアインター(埼玉)などに通う生徒たちがこれに該当するが、コロンビアインターは各種学校の認可すらない無認可校だ。

 Q しかし、日本政府は朝鮮学校については各種学校という、学校そのものの資格を口実にして拒んできたのではなかったのか。

 A その通りだ。日本の学校は大別して「1条校」「専修学校」「各種学校」に分けられており、外国人学校の多くは各種学校という一番低いステイタスに置かれている。

 今まで文科省は、朝鮮学校の大学受験資格を認められないのは正規の学校ではなく各種学校だからという理屈で門前払いしてきた。65年には「民族性を涵養する朝鮮人学校は各種学校として認可すべきでない」という文部次官通達を都道府県知事宛てに出し、圧力をかけた。しかし、75年まで朝鮮学校が所在するすべて都道府県知事が認可を付与し通達は形骸化。しかし、その後は朝鮮学校が各種学校だということを理由に受験資格、公的助成を否定している。

 「インターの場合、なぜ無認可校でもいいのか」の質問に文科省国際課は、「とくに各種学校の認可を受けているかどうかは問題にしなかった」という。朝鮮学校に対しては各種学校だからダメだとし、無認可のインターには他国の評価システムまで借りて資格を認める、ダブルスタンダード、学校差別としかいいようがない。

 Q 文科省はいまだに「検討中」との立場をとっているが、何か動きはあるのか?

 A 何をどのように検討しているのか、まったく明らかにされていない。

 そもそも今回の決定は総合規制改革会議が提案したことから始まっているが、昨年12月に発表された同会議の第2次答申は「インターナショナル・スクールについては、その定義を明確化した上で、学校教育法第1条に基づく私立学校に準じた扱いになるよう各種の支援措置が検討されるべきである」としている。

 問題はここで指す「インターナショナル・スクール」が何を意味するかだが、これに対して文科省はまだ答えを出していない。

 Q ところで、文科省は外国人学校に対する調査を行ったのか。

 A まともな調査はしていない。それを証明するのが、同省が最近記者発表した資料「外国人学校一覧(高校段階にあるもの)」。

 この資料は、高校レベルまである外国人学校を学校法人、準学校法人、財団法人、無認可校のカテゴリーに分けたうえで、今回認められたWASC、ACSI、ECISの認定を受けているか、国際バカロレア、仏バカロレア、独アビトゥア参加校かどうかをチェックしたものだ。朝鮮学校は準学校法人に含まれているが、ブラジルやペルー人学校が1校も入っていないことがわかる。

 ブラジル人学校は近年各地で増え続けており、ブラジル大使館によると本国から認定を受けている学校だけでも25校。そのうち高校レベルまである学校は13校(栃木、静岡、群馬、三重、岐阜)におよぶ。

 文科省大学課に調査方法について問い合わせたところ、「WASCなどの本部に認定校を確認した後、該当するインターに電話した」。その他の外国人学校については、都道府県に確認できる各種学校、それ以外は「確認している範囲内で調査した」という。ブラジル人学校が資料にあがってこなかったのは各種学校の認可がないからだが、最初から結論ありきの調査だった。

 Q 文科省に要請に行った朝鮮学校関係者は、学校訪問を求めているが。

 A そもそも日本政府は国内にある外国人学校の数、実態、教育内容すら把握していない。それは、日本の学校教育法に外国人学校を「学校」として定める規定がないからだ。

 文科省、この案を出した総合規制改革会議、国会は原点に立ち戻って議論を尽くすべきだ。欧米のインターのみに大学受験の道を開き、アジア系やその他を排除するのでは規制を撤廃し、経済を活性化させようという同会議の方針とも矛盾する。

 現制度では、本国の学校で12年の教育を受けた外国人には大学受験資格が認められる一方、日本国内で本国に準じた教育を受けても資格がない。同じ教育を受けても本国と日本国内とでこれだけの差がでるのも制度の矛盾だ。

 先日、女性同盟京都代表らと会った衆議院文教科学委員会理事の奥山茂彦衆院議員(自民)は、民族学校の問題を包括的に協議するため「朝鮮学校を訪問する用意がある」と語った(8日)が、国会、文科省は調査段階から実質的に外された朝鮮、韓国、中華、ブラジル人学校のカリキュラム、学力、認可状況を調査することから始めるべきだ。

 国連の条約審査機関は日本政府に対し、朝鮮学校に対する制度的差別の是正をたびたび勧告してきたが、日本は無視してきた。今回の方針には非難が殺到しているが、日本政府が外国人学校の制度整備に積極的に取り組むチャンスでもあるのだ。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2003.3.15]