top_rogo.gif (16396 bytes)

〈大学受験資格問題〉 国連、日弁連「当然の権利」と再三認可求める

第51回国連人権委員会で発言する東京朝鮮中高級学校教員(右)と東京朝鮮第1初中級学校オモニ会の代表(1999年8月)

 文部科学省は3月28日、英米の学校評価機関の認定を受けたインターナショナルスクールのみに大学受験資格を認めるとした方針を「アジア系外国人学校についても拡大の方向で再検討する」(清木孝悦大学課課長)と発表した。受験資格をめぐるこのたびの一連の動きの端緒は、対日投資を誘致したい経済界からの要望を首相の諮問機関「総合規制改革会議」が受け入れたことにある。しかし、国連や日本弁護士連合会は当初から「認めるべき」と再三指摘してきた。

 日本政府が1994年に批准し、同年5月22日に条約として発効した「子どもの権利条約」は第28条で、「締約国は児童に対して教育についての権利を認め、初等教育を義務的なものとしてすべての者に対して無償のものとし、また、すべての者に対して中等教育及び高等教育を利用する機会を与える」と義務付けている。さらに29条では、条約締約国が「児童の父母、児童の文化的同一性、言語および価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観ならびに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること」をうたっている。

 しかし、条約発効後、各国における遵守状況をチェックした国連の「子どもの権利委員会」は98年6月、最終見解で「コリアン出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス…について懸念する」と表明。日本政府が条約に抵触していることを厳しく指摘した。

朝鮮学校の制度差別について国連の各条約監査機関が日本政府に出した勧告など

 ◇子どもの権利委員会の最終見解(1998年6月5日)「コリアン出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス…についてとくに懸念する」

 ◇自由権規約委員会の最終見解(1998年11月19日)「朝鮮人学校の不認定を含む、日本国民ではない在日朝鮮人マイノリティーに対する差別の事例に懸念を有する」

 ◇人種差別撤廃委員会の最終見解(01年3月20日)「在日朝鮮人の生徒が高等教育へのアクセスにおいて不平等な取扱いを受けていることを懸念している」

 ◇社会権規約委員会の最終見解(01年8月31日)「朝鮮学校を正式に認可し…補助金その他の財政援助を得られるようにすること、当該学校の卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告する」

 その後も状況が改善されなかったことから、国連の勧告や懸念が続いた。自由権規約委員会は同年11月、人種差別撤廃条約委員会は01年3月、社会権規約委員会は01年8月と日本政府に朝鮮学校差別の是正を勧告した。

 条約違反については、日本弁護士連合会(日弁連)も指摘。98年2月28日、日弁連は外国人学校の卒業生に対して国立大学が受験の門戸を閉ざし、助成においても不利益が生じていることは、「外国人の自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持する教育に関して重大な人権侵害があ」り、「子どもの権利条約など関係条約違反の状態が継続していると判断」。首相と文部大臣(当時)に勧告した。

 日弁連は5年にかけて作成した調査報告書で、朝鮮学校やインターナショナルスクールについて、「教育内容においてそれぞれの出身国の文化による教育と日本国に在住するに必要な教育を併せて教育内容を充実させており、世界的な水準以上のものである」と評価。「学校教育法第1条に定める学校と同等の資格を認定する処置をとるべきである」と指摘しながら、人権侵害状況を一刻も早く是正するよう求めた。

 しかし、勧告から5年たった現在も状況が改善されないばかりか、文科省が3月6日に一部のインターナショナルスクールのみに受験資格を認めると発表したため3月17日、会長声明を発表し警鐘を鳴らした。

 会長声明は、文科省が日弁連勧告と国連の各条約実施監査機関の「懸念と勧告」を重く受け止め、「外国人学校卒業生に対する国立大学の入学資格制限を撤廃し、在日外国人の教育を受ける権利を広く保障することを強く求め」(声明)ている。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2003.4.1]