外国人学校問題に関する大島衆院議員質問主意書、日本政府の回答 |
大島令子衆院議員(社民)が今年2月13日、綿貫民輔衆議院議長宛てに提出した質問主意書、それに対する小泉首相名の4月11日付け答弁書の全文は次の通り。 (大島質問)政府はこのほど、インターナショナルスクールについて受験資格を認める方向を打ち出しているが、わが国には他にも外国人学校があり、学校教育法の規制により、日本人と同じ権利を享受できない状況にある。何故、インターナショナルスクールだけなのか、ぜひ疑問に答えていただきたい。また、平成14年7月23日に提出した質問主意書に対する回答で未だ理解できない内容について以下、質問する。 1、政府は、今年度中にインターナショナルスクールの卒業生について 日本の高等学校や大学の受験資格を認める方針を打ち出している。こうした規制改革はインターナショナルスクールだけなのか、他の外国人学校について同様に認めることについてどのような検討がされているのか。また、他の外国人学校については認めないということであれば、何故、認められないのか、その理由を明らかにされたい。 (政府回答)外国人学校の卒業者に対する高等学校や大学への入学機会の拡大については、「規制改革推進3カ年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)に基づき、平成14年度中の措置を目指し検討してきたものである。 大学への入学機会の拡大については、従前より、大学入学資格検定に合格すれば外国人学校の卒業者に対しても大学入学資格が付与されているところであるが、「教育の国際化の観点からも、我が国の学校制度との整合性を勘案しつつ、インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には大学や高等学校に入学する機会を拡大すべきである」とした総合規制改革会議の規制改革の推進に関する第1次答申(平成13年12月11日)の趣旨に沿って検討し、本年3月6日に、国際的に実績のある評価団体により教育内容が一定水準にあると評価を受けた外国人学校の卒業者に対して大学入学資格を与えるとの対応案を公表した。現在、当該案に対するさまざまな意見を踏まえ、外国人学校の卒業者に対する大学への入学機会の拡大について検討中である。 また、高等学校への入学機会の拡大については、就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定規則(昭和41年文部省令第36号)を改正し、日本国籍を有する者であって、就学義務猶予免除者ではなく、義務教育諸学校に在学せず、同規則に基づく認定試験(以下「認定試験」という)の日の属する年度の終わりまでに満15歳に達する者で、その年度の終わりまでに中学校を卒業できないと見込まれることについてやむを得ない事由があると文部科学大臣が認めたものについて、新たに認定試験の受験資格を認めることとした。 なお、日本国籍を有しない者については、認定試験の日の属する年度の終わりまでに満15歳以上になるものについて、既に認定試験の受験資格が認められているところである。 (大島質問)2、昨年7月23日に提出した質問主意書の質問1に対し、政府は(国連・子どもの権利に関する委員会が調査、排除を勧告した韓国、朝鮮およびアイヌの児童を含む少数者の児童への)差別的取扱いを突発的、一時的と捉えているかのごとき答弁だが、本質問主意書の1の質問のとおり、今回の措置に他の外国人学校を含めないというのを差別とは考えないのか。 また、国連の児童の権利に関する委員会の「韓国、朝鮮及びアイヌの児童を含む少数者の児童の差別的取扱いが、何時、何処で起ころうと、十分に調査され排除されるように」との勧告に従って事案に応じた処置を講じているとのことだが、在日外国人児童の受験資格問題や学校制度における差別的取扱いについて、どのように実態を調査し、排除されたのか、明らかにされたい。 (政府回答)1についてで述べたとおり、外国人学校の卒業者に対する大学への入学機会の拡大については、現在検討中である。 高等学校や大学への入学資格については、これまでも、日本国籍を有しない児童、生徒が学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(以下「1条学校」という)を卒業した場合には、日本国籍を有する者と同様に高等学校や大学への入学資格が認められており、また、1条学校を卒業しなかった場合であっても、法令上の要件を満たす者については、認定試験または大学入学資格検定に合格した場合は高等学校または大学への入学資格が付与されているところであって、制度上不合理な差別があるとは考えていない。 また、ある教育施設を学校教育法上どのような教育施設として認可するのかという点については、設置者の認可申請に基づき、各々の学校種について満たすべき法令上の要件に照らして判断されるものであり、この点についても制度上不合理な差別があるとは考えてない。 (大島質問)3、また、同回答の1において、「具体的な事案(韓国、朝鮮およびアイヌの児童を含む少数者の児童に対する差別的取扱い)に関する調査等については、関係者のプライバシーに係わる事柄であるのでお答えすることを差し控えたい」とあるが、プライバシーの保護という意味では、その氏名、身分事項等、個人を特定できる事柄を伏せれば公開は可能と考えるが、いかがか。 (政府回答)法務省の人権擁護機関において調査処理した事例としては、例えば、在日朝鮮人である生徒が「朝鮮へ帰れ」などの暴言を浴びせられた事案において、法務局職員が相手方に発言の不当性を説諭したという事例、在日朝鮮人である生徒が登下校の際に嫌がらせを受けた事案において、法務局職員及び人権擁護委員が学校の周辺で啓発活動を行ったという事例などがある。 (大島質問)4、さらに、同回答の4において、「各種学校に対する寄附金でこれまでにこれらの特例措置の対象となったもの(インターナショナルスクール、東京韓国学校など)については、当該各種学校が保護者の用務の都合により我が国に短期滞在する外国人子女を多く受け入れており、対内直接投資を促進し、海外から優秀な人材を呼び込むうえで重要な役割を果たしていると考えられ」とあるが、それでは 長期滞在する外国人子女については、日本社会にとってどのような意義があると認識しているのか。 (政府回答)御指摘の答弁については、保護者の用務の都合により、我が国に短期間滞在する外国人児童、生徒を多く受け入れている各種学校が、対内直接投資を促進し、海外から優秀な人材を呼び込む上で重要な役割を果しているという趣旨を述べたものであり、我が国に滞在する外国人児童、生徒の社会的意義について述べたものではない。 (大島質問)5、昨年の秋以降、朝鮮学校及びその児童、生徒への嫌がらせ事件が頻発している状況について、どのようにその実態を把握しているのか。また、この間、どのような対応をとられたのか、今後、どのように対処されるのか明らかにされたい。 (政府回答)法務省の人権擁護機関においては、法務局、地方法務局に専用相談電話「子どもの人権110番」を設置し、子どもの人権に関わる問題の実態の把握に努めているところであり、警察においても、朝鮮学校の関係者と緊密に連携を取り、児童、生徒に対する嫌がらせ事件発生時の通報体制を確立し、その実態の把握に努めていると承知している。 在日朝鮮人児童、生徒への嫌がらせ行為等の発生を防止するため、法務省においては、平成14年9月19日、法務局、地方法務局の人権擁護部門に対し、重点的な啓発活動の実施、人権相談等への積極的な取組を指示したところであり、当該指示に基づき、法務局、地方法務局では、啓発ポスター及び啓発チラシを約35万枚作成し、全国約250カ所において街頭啓発活動を実施して啓発チラシ等の配布等を行った。また、警察においては、在日朝鮮人児童、生徒の登下校時間帯の通学路の警戒を強化するなどの対応をとってきたものと承知している。 今後とも、在日朝鮮人児童、生徒への嫌がらせ等の発生を未然に防止するための重点的な啓発活動等を実施するとともに、人権相談等に対する積極的な取組に努めてまいりたい。 (大島質問)6、さらに、朝鮮学校の児童、生徒に対する嫌がらせに関し、被害届が出ているもの、逮捕、起訴、刑罰等がなされたものがあるならば、提示されたい。 (政府回答)昨年秋以降、朝鮮学校児童、生徒に対する嫌がらせに関し、被害届が提出されている事件として把握しているものとしては、朝鮮学校に脅迫文書が郵送された事件、朝鮮学校の施設の一部が破損された事件、朝鮮学校生徒の制服が切られた事件、朝鮮学校の自動車に取り付けられた部品が破損された事件があり、そのいずれについても、現在、警察において捜査中であると承知している。 (大島質問)7、2000年6月1日福島瑞穂参議院議員の質問主意書に対し、昭和40年12月28日文管振第210号事務次官通達「朝鮮人のみを収容する教育施設の取扱いについて」は地方分権一括法の施行によって現在は効力を失っているとの回答が出されているが、同通達に盛り込まれている「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められない」という立場は、現在、どのように変わっているのか。また、変わっているのであれば、どのような認識で「朝鮮人のみを収容する」学校に対し、臨んでいるのか明らかにされたい。 (政府回答)御指摘の通達の引用部分については、先の答弁書(平成12年8月25日内閣参質147第53号)第3の2についてで述べたとおり、効力を失っているものであり、朝鮮学校を学校教育法第83条に規定する各種学校として認可するに当たっては、所轄庁である都道府県知事が関係法令に基づき適切に判断するものと承知している。 [朝鮮新報 2003.4.17] |