〈大学受験資格問題〉 文科省の「再検討」発表から2カ月、今が運動の山場 |
文部科学省がアジア系やブラジル学校を排除し、英米の学校評価機関の認定を受けたインターナショナルスクール(以下インター)16校にのみ大学受験資格を認めるとする方針の再検討を発表し2カ月がたった。同省は当初、7月初めまでに再検討の結果を発表するとしていたが、現在、具体的な動きはない。すでに大学入学資格検定(大検)の第1回締め切りは今月30日に迫り、各大学の04年度募集要項は仕上げの段階に入っている。大学受験資格を獲得する運動は今まさに山場を迎えている。 大臣、正当化の発言も
衆参両議院の文教科学委員会では、文科省が「再検討」を発表した後も受験資格問題に関する追及が続いている。4月2日、公明党の斉藤鉄夫、民主党の山元勉両衆院議員は文科省が一日も早く結論を出すよう求めた。しかし、遠山敦子大臣は「白紙撤回ということではなくて、対象にならなかったところ(インター以外の外国人学校)を何か救済する方法があるかどうかということを今後もう少し考えてみようということ」だと時期については明言を避けた。そればかりか、「認証機関の認定を経たということは、私はきわめて妥当な線であると思っている」と、非難殺到の方針を肯定する発言までする始末だった。「再検討」発表から4日後の3月31日、同省は一部インターのみに税制優遇措置を認める省令を発表、猛反対を受けた「基準」を再度持ちこんだことも議員の怒りを買った。 国会レベルでは、3月12日、自民、公明、与党の3党幹事長が遠山大臣に直接会い、すべての外国人学校卒業生に受験資格を認めることを要請。とくに公明党は冬柴鐵三幹事長、北側一雄政務調査会長、斎藤鉄夫文部科学部会長が3月13日に遠山大臣に要望書を提出している。要望書で冬柴幹事長らは、「同省の方針はアジア系の外国人学校を排除し、差別するものであり、到底容認できるものではない」としながら、「04年度」の大学入学者から資格を与えるよう強く求めた。 与野党も動く 与党が問題解決を求める動きは以前には見られなかったことだが、文科省の対応は進んでいない。緊迫する朝鮮半島情勢と朝鮮学校を関連付けて政治問題化させようという一部国会議員の圧力に加え、文科省が外国人学校を日本社会でどう位置づけるかという広い視野をもって取り組んでいないからだ。 そもそも受験資格問題は、「インターにおいて一定水準の教育を受けて卒業した場合は、大学や高等学校に入学する機会を拡大すべきである」とする閣議決定(02年3月)から始まっている。「一定水準の教育」をどう判断し、「インター」の定義をどう定めるのか。外国人学校調査は初歩的な作業であるにもかかわらず、文科省は要望に訪れる朝鮮学校関係者が学校訪問を求めても回答をさけ、いまだに取り組んでいない。 朝・日ともに 打開の糸口は「方針撤回」を促した世論に訴えることだと、東京、神奈川、埼玉、群馬、北海道の同胞と日本市民は署名運動に立ちあがった。朝鮮学校では24日の埼玉を皮切りに授業を一般公開。文科省の立場を踏襲し、受験資格を認めていない国立大学でも教員らが賛同署名を集め京都、一橋、埼玉、大阪大の朝・日の学生たちは、大学独自の判断を求め、署名や集会、街頭アピールを進めている。 朝・日市民らの共同歩調の動きも活発だ。国会会期末の6月中旬に院内集会を開き、国会議員に問題をアピールする動きも出ている。 外国人学校同士の連携も進んでいる。兵庫県内の外国人学校で結成される兵庫県外国人学校協議会は2月21日、いち早く池坊保子政務官に会い要望した。この3年、朝鮮、韓国、中華、インターナショナルスクールと絵画展を通じて交流してきた東京では、外国人学校の輪をさらに広げようと6月14日、東京朝高で(北区十条)フェスティバルを企画している。 方針撤回を促したのは世論の力だったが、各地ではもう一度大きなうねりを作ろうと最後の追い込みに拍車をかけている。(張慧純記者) [朝鮮新報 2003.5.27] |