〈大学受験資格獲得へ(1)〉 神奈川「あーすフェスタ」 |
神奈川に住む外国籍県民とNGO、県が実行委員会を組んで主催した「あーすフェスタ2003―みんなで育てる多文化共生−」が10、11の両日、2万人の参加のもと、横浜市のあーすプラザで行われた。外国籍県民と地域住民との交流を目指した企画は今年で4回目。フェスタでは朝鮮、中華学校、日本の児童による芸術公演をはじめ、民族衣装のファッションショーや料理教室など多文化の催しが盛りだくさんだった。 「しゃべり場」
今年の目玉は10、20代の若者が出演する「しゃべり場」。2日間かけて3時間ぶっ通しで語り明かす。司会の゙壽隆さんは民団青年会会長をしながら川崎市の日本の高校で教壇に立つ。サブリーダーを務めた温悠さん(23)は横浜山手中華学校出身の大学院生、比嘉リカルド光雄さん(25)は、12歳までブラジルで過ごした。朝青の呉亨宇(23)、金英美(19)さん、昨年春に神奈川朝鮮高級学校を卒業したフェリス女学院大学生の金真伊さんらも議論に加わった。 一日目のテーマは、「日本の学校と世界の学校」。懸案になっている外国人学校の大学受験資格問題も話題に上った。 比嘉さんは、文部科学省がなぜ同じ外国人学校でもインターナショナルスクールだけに受験資格を認め、アジア系やブラジル人学校を排除しようとしたのか、「区別の根拠がわからない」と思いをぶつけた。この日まで10回近く討議を重ねたメンバーたち。日本の大学生が「朝鮮学校はもっと積極的に学校を公開して、もっとたくさんの人に見てもらわないと」と注文をつける場面もあり、朝高出身の金さんらは、「民族教育を受けた者として自分の口でアピールしなくちゃ」と課題を探っていた。 現在、県内に住む外国人は13万5104人(01年末現在)。上位は戦前から日本に住む在日コリアンや中国人、そして、ブラジル、フィリピン、ペルーと続く。国籍の数は154に及ぶ。県民の63人に一人が外国人だ。 この現実を踏まえ、神奈川県は外国人が身近な生活や制度的な問題を話し合い、県政に反映させる場を設けようと98年11月、外国籍県民かながわ会議を設置した。年に一度、県知事に提言を出しているが、外国人学校の処遇問題も取り上げられており、第1回会議の提言には助成の充実が盛り込まれた。大学受験資格問題に関しても県は96年、横浜市、川崎市と連名で日本政府に要望書を提出しているが、制度の「山」はなかなか動かない。 ありのままを表現 自治体としてこの「壁」をどう崩すか。「あーすフェスタ」はこのようなジレンマから生まれたと言える。「外国人がありのままの自分を表現する場を設けることで、地域の人たちが違いを理解し、外国人が抱える問題について考えるきっかけになれば。そこで生まれたつながりは問題解決に必ず生きる」(西海裕之・県民部国際課主任主事)。 「あーすフェスタ」の実行委はフェスタを一過性のイベントではなく、制度的差別、外国人への偏見をなくしていく「人間関係」に発展させることに力点を置いている。実行委には総聯、民団の両県本部、横浜華僑総会、かながわベトナム親善協会などの外国人団体が名を連ね、彼らを支援するNGO、地元の自治会、県も加わる。メンバーのひとつ「あーすネットかながわ」は、フェスタに関わった人たちをつなげるNGOだ。例えば県職員でフェスタを担当したものの、他の部署に移動になったとしても続けて関わることができる言わば「受け皿」だ。 このように日本市民と外国人が共同で取り組むシステムを作ることで、連携が進んでいる。今回、フェスタのボランティアには約130人が参加。朝青と民団青年会は民族文化紹介コーナーをともに設けた。 当初からフェスタに関わり、今回実行委企画班のリーダーを務めた「安さんは、「外国人自らが積極的に行政や市民と手を取り合うことで、制度の壁を崩せるのでは」と振り返る。(純) 山場を迎えている大学受験資格問題。獲得に向けた各地の動きを紹介していきます。(編集部) [朝鮮新報 2003.5.30] |