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〈大学受験資格獲得へ(4)〉 弁護士有志の会が質問書

 民族学校の大学受験問題で5日、弁護士グループが現行の大学入学資格に関する諸規定および取り扱いに多くの法的問題点があるとして、文科省の遠山敦子大臣宛てに質問書を提出した。提出後、文科省内で記者会見を開いた弁護士らは、今後、各国立大学に直接、受験資格を認めるよう申請書を提出していく意向を表明した。

矛盾点を浮き彫り

質問書提出後、記者会見を開く有志の会のメンバー

 質問書を提出したのは、全国の165人の弁護士が立ち上げた「外国人学校、民族学校の問題を考える弁護士有志の会」(以下有志の会)。同会の共同代表を務める東京弁護士会の新美隆弁護士と龍谷大学の田中宏教授が文科省を訪ね、池坊保子文科大臣政務官に手渡した。社民党の保坂展人衆院議員が同席した。

 質問書は、「子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約などの国際条約はもとより、憲法第26条1項の教育を受ける権利および憲法第14条1項の平等権補償の観点から、外国人学校の高等学校相当課程修了生に対しても大学入学資格を認めるべき」と指摘しながら、現行の大学入学資格に関する諸規定、取り扱いにおける法的問題点に対して13項目にわたり質問している。

 各質問は、学校教育法施行規則の項目を具体的に挙げ、それと照らし合わせる形で、外国人学校卒業生の受験資格が認められていないことの矛盾点を浮き彫りにするものとなっている。

 質問4では、専修学校卒業生の大学入学資格が認められていることと関連し、「朝鮮高級学校をはじめとする外国人学校高校相当課程の多くは…専修学校よりもその教育課程の編成、内容は学校教育法1条の高等学校に近いにもかかわらず、日本の大学入学資格が認められない理由は何か」と問うている。

 質問9から13では、大学独自の受験資格認定問題をとりあげ、公立、私立が独自に認めている現実のなかで「大学の国立、公立、私立といった設置主体の違いによって異別はあると考えるか」(質問9)と問い、大学院受験においては国立大学でも独自の判断が認められている事実を踏まえ「大学において、個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、18歳に達したもの」との規定を新たに設けられないかと問うている。

 新美弁護士は、「一部のインターナショナルスクールのみに受験資格を認めるとした文科省の方針は、政財界の意向を反映したきわめて『感情的なもの』と言わざるを得ない。法律の専門家である弁護士が理詰めで法的問題点をきちっと指摘することはきわめて重要だ。現行法においても受験の道を開くことは十分可能だ。問題は文科省の行政指導にある」と話す。

 有志の会では質問書に対する回答を6月30日までに求めている。対応にあたった池坊政務官は、遠山大臣に間違いなく伝えきちんと対応したいと答えた。

大学の責任も追及

 有志の会では質問書の提出とともに、今後の行動として、各国立大学に直接、受験資格を認めるよう申請書を提出していく意向を明らかにした。

 国立大学はセンター試験の受験を課しており、朝鮮高校生徒の場合、学校教育法施行規則第69条6号により、個別に大学の学長が発行した認定書を提出しなければならない。今後、有志の会の弁護士が朝鮮高校卒業予定者のなかで国立大学受験を希望する生徒の代理人となり、個別の国立大学に「入学資格認定書交付申請」を提出していく。生徒本人ではなく弁護士が代理人となって提出することによって、国立大学の独自の判断を厳しく迫ろうというものだ。有志の会の張學錬弁護士は、「代理人での申請が大学側にプレッシャーとなる。各大学が独自で判断するにしろ、文科省の判断を仰ぐにしろ、受験資格を認めさせる突破口となる」と話す。

 有志の会では、6月にも東大、京大、阪大、九州大、一橋大などの国立大学に申請していく予定だという。文科省は在日同胞の抗議運動や内外の強い批判の声を受け、方針を3月末に一旦凍結し再度検討するとした。しかし、その後何ら結論を出していない。金舜植弁護士は、「大検の第1回の願書受付は5月にすでに終了している。検討が長引けば国立大学受験を希望する朝鮮学校生徒らに大きな影響を与えてしまう。これ以上、子どもたちの権利が侵されつづけるのは許せないし、子どもたちにとっては切迫した問題だ」と、この問題が時間との戦いであることも強調する。

 新美弁護士は、「大学側が文科省の方針に右にならえという判断を下すなら、大学の責任も追及しなければならない」と、今後、法的に厳しい対応をとることも示唆した。(琴基徹記者)

[朝鮮新報 2003.6.9]