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「初めて人間扱いされた」−東久留米市の無年金高齢、障害者給付金支給

 東京都東久留米市が無年金状態に置かれている市内在住の在日外国人高齢者、障害者への福祉給付金支給を開始した(4月から、高齢者、障害者ともに月額1万円)。都下では葛飾区、豊島区、町田市に続く支給で、地元の西東京東部同胞生活相談綜合センターと「定住外国人の『国民』年金の完全実施を求める市民の会」(篠原道夫代表)の足かけ10年におよぶ運動が実ったものだ。関係者たちは「今後も給付金の増額を求め、引き続き要請していく」(李在哲、西東京東部同胞生活相談綜合センター所長)との決意を新たにしている。(李明花記者)

全会一致で採択

 日本政府が1982年に国民年金制度の国籍条項を撤廃した時、在日外国人を救済しようとしなかったため、制度の谷間に置き去りにされた無年金の同胞たちは苦しい生活を強いられてきた。そうした状態に置かれている同胞の処遇改善を実現するため、総聯西東京東部支部は10年前から管下10市に対し給付金を求める要請活動を行ってきた。94年2月には、当時の支部委員長として運動の先頭に立っていた金官輝さん(現・総聯西東京本部副委員長)、同支部北分会を中心とした地域同胞らが初めて、東久留米市議会に「在日朝鮮、韓国人高齢者と障害者に国民年金適用の救済措置を求める」請願を提出し、全会一致で採択された。

救済制度の拡充へ

東村山市の国平寺で行われた報告集会

 同地域の同胞たちが「定住外国人の『国民』年金の完全実施を求める市民の会」(以下、「市民の会」)の日本人メンバーらと出会ったのは、運動開始から2年目、96年のことだ。彼らから「在日外国人の実情について知りたい」と声をかけられたのをきっかけに、同年2月の同会発足とともに運動を続けてきた。市への要請、陳情、集会なども共同で催し、この間4回にわたる市議会採択を経て広く世論に訴えかけた。「在日外国人への理解を深めよう」と東京朝鮮第9初級学校児童との交流、朝鮮大学校訪問なども行った。

 市議時代からこの問題に理解を示していた野崎重弥・新市長の就任(02年)から1年で採択にこぎつけた。5日、国平寺で行われた報告集会で金さんは、「私たちだけの力ではここまでくることはできなかっただろう。これも日本のみなさんの協力があったから。今後も力を合わせ、救済制度のさらなる拡充へ向けてともにたたかいましょう」と呼びかけた。

歴史的経緯踏まえよ

李在哲西東京東部同胞生活相談綜合センター所長が代理人となり、給付金申請書に必要事項を書き込んだ。申請者の中には字の書けない同胞も。「一緒に申請してくれ、心強い」

 6月5日、同センターの李所長とともに申請に訪れた同胞障害者(70)は、「初めて人間として扱われたようだ」と嗚咽をもらした。71年に事故で左半身が不随となって以来、不自由な生活を続けてきたという。「税金は取るくせに朝鮮人だとばかにして日本政府は何もしてくれず、1人で生きていくのが辛かった」。民団に所属しており、今まで総聯とのかかわりはなかったが、「今日は李所長に付き添ってもらい、書類の提出なども助けてもらって力強い」と述べていた。

 同じく申請した同胞高齢者(77)は耳が遠いため、記者の質問を聞き取ることすらできなかった。長男(34)は、「日本の植民地時代、生活が苦しく祖国を離れざるをえなかった父は、建設現場で働きづめ、4人の子どもを立派に育て上げてくれた。働きかけてくれた同胞、日本市民に感謝の気持ちでいっぱいだ」と述べた。

 「市民の会」で佐藤友信さんは、「日本政府は歴史的経緯を踏まえた救済措置をとるべきだ。老齢年金と同じ3万円まで給付金が増額されるようこれからも要請し、都部、市部へと救済制度を広げていきたい。当事者に残された時間は限られている」と決意を新たにしていた。

[朝鮮新報 2003.7.18]