そこが知りたいQ&A−大学受験資格問題で文科省の「弾力化」方針、なぜ朝鮮学校だけ個別審査? |
Q 文部科学省は6日に発表した「大学入学資格の弾力化」方針で、「外国人学校卒業者にも大学入学資格を与える」としたが、その内容は。 A @国際的な評価団体(WASC、ECIS、ACSI)の評価を受けたインターナショナルスクール卒業生A本国の教育課程(12年)と同等であると位置付けられていることを大使館等を通じて公的に確認できた外国人学校卒業生B大学の個別審査により高校卒業と同等以上の学力があると認められる者―に入学資格を付与するというもの。 @には3月の当初案で対象となった英米系インターナショナルスクール16校が該当する。Aには、日本と国交があり大使館などを通じて公的に本国承認を受けていると確認できる韓国学校やインドネシア学校、カナディアン・インターナショナル、独、仏系の学校などが該当する見込みだ(該当校は文科省告示で指定)。また文科省は国交のない台湾系の中華学校も、日台間の実務を処理する「財団法人交流協会」を通じて教育内容が確認できるとして、Aに入れることを検討している。 Q 朝鮮学校については。 A Bに位置付けられている。「本国での位置付けが不明であり、法的に確認することが困難」「(6日、文科省発表)との理由からだ。 そもそも外国人学校のなかで国立大学への受験希望者は、実質的には日本に定住している朝鮮学校出身者がほとんどだった。それだけにAのように学校単位で認めず、朝鮮学校だけを各大学の個別審査にゆだねる今回の方針は、同校生徒、保護者をはじめとする同胞、国立大教員、弁護士ら関係者の間に「朝鮮学校はずし」だと新たな怒りをよんでいる。 Q 学校単位で認められなければ、どのような不利益が生じるのか。 A 第1に、受験生に大きな負担を与えかねない、ということだ。@、Aでは、卒業生全員に自動的に大学入学資格が与えられるが、Bでは大学が入試前に卒業生(予定者)を個々に審査して受験させるかどうか決める。「各大学にゆだねる」ということは、「資格を与えないという選択肢」もあるわけで、審査基準を設けるのは面倒だとして、引き続き大学入学資格検定(大検)を課す大学が出てくる可能性もある。 事実、「方針」を受け、すでに各国立大学の対応にはばらつきが出始めている。国立大として初めて、文科省に門戸開放を要望した京都大学では、「せっかくの受験希望者に安心して受験勉強をしてもらうためにも、政令の改正などを待ってできるだけ早く判断できる体制を整えたい」(尾池和夫副学長)としたのに対し、一橋大学の石弘光学長は、「個別認定は困難」との否定的見解を表明した。「方針」は一見「大きな前進」(5日付毎日新聞)と誤解されがちだが、文科省が朝鮮学校の認定義務を各大学に「丸投げ」したことで、他の外国人学校と朝鮮学校間の新たな線引きがなされているのは許しがたい。 第2には、朝鮮学校がこれまでも学校として認められてこなかったことによってこうむってきたさまざまな差別の解消にもつながらない、ということだ。 朝鮮学校は、学校として最低のステイタスである「各種学校」に位置付けられてきたため、税制上の優遇措置をはじめ、国、地方自治体からの助成金問題などさまざまな差別を受けてきた。保護者の負担が大きい理由もここにある。私たちは学校としてのしかるべき法的地位を外国人学校に付与することを求めてたたかってきたが、今「方針」ではこれらの問題解決につながる道が遮断されている。 Q 国立大の対応にはばらつきがあるが、そもそも多くの公私立大では朝鮮学校卒業生の受験資格を認めてきたではないか。 A そうだ。学校教育法施行規則第69条6号「大学において相当の年齢に達し、高等学校を卒業したものと同等以上の学力があると認めた者」により、公立大の51.5%、私立大の49.9%が朝鮮学校卒業生にも受験資格を認めている(2001年現在、民全連調べ)。そのなかで、国立大学だけが文科省の強い指導により今まで受験資格を認めてこなかった。文科省は個別審査について「細かい条件を出すつもりはない」としているが、「横やりを入れてくる可能性は十分ある」(張学錬弁護士)。 Q なぜ文科省は「朝鮮学校はずし」をしたのか。 A 「なんとしてでも朝鮮学校だけは学校として認めたくない」という発想が根底にある。その原点には、「朝鮮人としての民族性を涵養する朝鮮人学校を各種学校としても認めない」とする1965年の文部事務次官通達がある(その後、75年までに各都道府県知事の認可によりすべての朝鮮学校が各種学校認可を取得。通達は形骸化している)。 Q 今後の見通しは。 A 文科省は、今月20日まで「方針」に関するパブリックコメントを求め、2004年度入試に間に合うよう、8〜9月にかけて省令改正を目指すとしている。 「インターのみに限る」とした3月の当初案について、同省が募集したパブリックコメントの結果は、その96%が「アジア系にも大学受験資格を与えるべきだ」というもので、方針凍結へ向けた追い風となった。文科省の「朝鮮学校はずし」を撤回させ、朝鮮学校卒業生にも学校単位で入学資格を与えられるよう、パブリックコメントなどを通し一丸となって世論を喚起していく必要性がある。(李明花記者) [朝鮮新報 2003.8.16] |