〈人権協会主催第1回公開学習会〉 「新たな文科省方針どう見るか」テーマに |
在日本朝鮮人人権協会が主催する公開学習会の第1回目「新たな文科省方針(大学受験資格)をどう見るか? そして今後の取り組み課題は?―朝鮮学校処遇の現状と課題」が8月30日、東京都台東区の同胞法律・生活センター会議室で行われ、都内在住の同胞、日本市民ら35人が参加した。「在日朝鮮人の民族的アイデンティティーと共生」を共通テーマに、2カ月に1度、時宜にかなった内容を取り上げていく。昨年5月から1年間、民族教育、福祉など在日同胞社会における諸問題をとりあげてきた連続セミナー(5回開催)に続くもので、小規模で行われるのが特徴。事務局では、「茶菓子でもつまみながら気軽に質問したり、意見を交わす場にしていきたい」(金東鶴部長)と多数の同胞の参加を呼びかけている。 同胞弁護士が発言 この日、大学受験資格を求める運動の成果と残された課題などについて、金舜植(人権協会会員)、洪正秀(人権協会副会長)の両弁護士が発言した。 文部科学省が8月6日に発表した「大学入学資格の弾力化案」は、一部の外国人学校には卒業生全員に資格が自動的に与えられるのに対し、朝鮮学校は「公的な確認が困難」だとして各大学の個別審査にゆだねるというものだ。 金弁護士は、「複数の大学を受験する朝鮮学校出身者は、大学ごとの個別審査を受けなければならず、そのような面倒を避けるため大検を取得する者も出てくるだろう」と方針の問題点を指摘。朝鮮学校の生徒にとって、大検自体は学校水準から見ても難しくないとしながらも、「なぜ朝鮮学校の資格で受験できないのかが問題だ。サッカーの試合にウリハッキョのユニホームを着て出場できないのと同じ。政治的な理由から朝鮮学校だけを排除するという露骨な差別が国際化、多文化共生をうたう21世紀の現代社会にまかり通っている恐ろしさを感じている」と述べた。 今後の課題も提起 朝鮮学校は1条校となんら変わりない教育水準を満たしているにもかかわらず、大学も含め「各種学校」という学校として最低のステイタスに置かれていることからさまざまな制度的差別をこうむってきた。 洪弁護士は、そのような文科省の思想の根本には「『朝鮮学校を学校として認めない』とする1965年の文部事務次官通達がある」と指摘。 大学に2年以上在学し、司法試験管理委員会が定める単位を修得した者には免除される司法試験1次試験が朝大生には免除されないことなど各種学校であることに付随するさまざまな差別を例にあげながら、今方針の根底にある日本政府、文科省の不当性を検証した。 これらを含めた今後の課題について金弁護士は、「朝鮮学校卒業を個別審査の基準とするよう引き続き大学側にプレッシャーをかけながらも、日本の弁護士、国立大教員をはじめとする日本人士、同胞たちと手を取り合い、日本政府に民族教育を認めさせる運動へと拡大させていきたい」と強調した。 ざっくばらんな雰囲気のなか、参加者たちは気軽に質問を投げかけながら交流を深めていた。(李明花記者) 次回は、「国連勧告と民族的マイノリティーの権利−子どもの権利条約の日本政府報告書審議に向けて」。 10月11日(土)、午後2時半〜、同胞法律・生活センター会議室(JR御徒町駅下車徒歩4〜5分)。 内容:@「『従軍慰安婦』、チマ・チョゴリ事件、民族学校処遇…これまでの国連における取り組みについて」(洪祥進朝鮮人強制連行真相調査団事務局長)、「子どもの権利条約に向けた取り組みと課題について」(宋恵淑人権協会事務局) ※第1回勉強会の資料集は同協会で購入可(1部500円)。すべての問い合わせは、在日本朝鮮人人権協会(TEL 03・3837・2820)まで。 [朝鮮新報 2003.9.8] |