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兵庫県宝塚市の朝鮮学校への就学補助減額方針に保護者、同胞、市民団体反対書名運動

 兵庫県宝塚市が財政難を理由に来年度予算案を減額、福祉、教育部門など180項目の補助金を一律3割削減することを発表し、12月の市議会に提案を予定している。この中に、朝鮮学校初級部生徒に対する就学補助が含まれていたことから市民レベルで強い反対の声があがっている。朝鮮学校に児童を送る同市在住の保護者や同胞らは、日本市民らと共に「在日朝鮮人、朝鮮学校に対する不当な差別をさらに助長する動きだ」として反対の署名運動を展開している。(千貴裕記者)

なぜ一律なのか

市教育長に要請活動をする学校関係者と宝塚地域の保護者たち

 3割削減という事実と共に、同胞、学父母たちの怒りをかき立てているのは市の対応だ。10月28日に市教育委員会は、伊丹朝鮮初級の金弘修校長に電話をかけてきて、補助金減額を通告した。おりしも11月10日には、地域の市民団体がすでに提出していた「宝塚市における外国人の人権保障実現を求める要望書」に対する市との交渉(8年前から毎年実施。5つの市民団体と、オブザーバーとして総連と民団が参加)が予定されていて、本来ならこの場で、要望書に明記した就学、就園補助金増額に対する説明と共になされるべきものだった。

 というのも、要望書に対する市の回答書には、就学、就園補助金の増額要望に対し、「財政状況が非常に厳しい状況にあるが、今後とも検討課題とし、阪神(地域)間の状況も参考に考えている」と明記されていたからだ。

 ましてや私学の補助の半分にも満たない朝鮮学校に対する補助金を、なぜ一律に減額処置の対象とするのか。「在日朝鮮人が日本に渡ってきた歴史的経緯や、子どもの権利条約など国際人権規約の規定からしても朝鮮学校は冷遇されるのではなく厚遇されるべきだ」などと同胞たちの憤りはおさまらない。

市民団体も署名

会合で共闘していくことを確認する学校関係者と市民団体の人たち

 宝塚市は94年から、年間生徒1人当たり11万円(02年から14万円)の「朝鮮学校児童保護者補助金」を給付してきた。

 しかし今回、市の方針が来年度予算案審議で可決された場合、生徒1人当たり4万2000円の減額となる。これは、市が昨年度から増額した就園補助と同額で、差し引きゼロの計算となる。

 昨年、少子化と長引く不況による財政難のため、宝塚初級は伊丹初級と統合。宝塚地域の生徒たちは遠距離通学を余儀なくされ、保護者には学費負担だけでなく交通費の負担も重くのしかかっている。

 学校、保護者たちを中心に宝塚の同胞たちは、朝鮮学校に対する補助の減額は論外で、逆に最低でも私立並に増額すべきだと主張、12月議会を目前に控え、緊急を要する問題だけに補助金減額反対の署名活動を行い、広範な市民に呼びかけている。

 また、5つの市民団体も、朝鮮学校児童の保護者にこれ以上の負担を負わせるべきではないと、在日朝鮮人の学ぶ権利が保障されるよう独自に署名運動を展開している。

 I女性会議宝塚支部の手束光子支部長は、「宝塚市に55年間ありつづけた朝鮮学校は、この地で異文化が花咲いていたことと国際交流の大切さを日本人に教えてくれた。在日朝鮮人たちも納税義務を果たしている。市は朝鮮学校に対し減額ではなく増額すべきだ」と指摘する。

 朝鮮問題を考える宝塚市民の会の田中ひろみ氏も「不平等なことで憤りを禁じえない。どんなにお金がなくても削減できない予算がある。現在でも少なすぎる補助金をこれ以上減らしてはならない」。

「削減反対」3党市議らも激励

 一方、伊丹初級の金校長ら代表11人は11月25日に市役所を訪れ、市教育委の布川和夫教育長と面談。市が政府に対し、朝鮮学校を一条校に準ずる学校として認めるよう申し入れてほしいと要請するとともに、市もそれに準じた措置を取り、補助金の減額を撤回するよう強く要求した。金校長はその場で、朝鮮学校児童保護者補助金の受益者の署名を教育長に手渡した。

 席上、発言した張守玉同校教育会宝塚地区保護者協議会代表(教育会副会長)は、「朝・日関係がこじれるたびにチマチョゴリがカッターナイフなどで切られる事件などが多発しているが、今回の市の減額申し入れは、行政のカッターナイフが朝鮮学校児童たちにふりかかっているようなもの。不当な差別を子どもたちの世代にまで引きずらないよう、良心に照らしても市は撤回すべきだ」と語った。

 他の出席者たちも、「未来を担う子どもたちを不平等に扱ってほしくない」などと訴えた。これに対し布川教育長は、「未曾有の財政難に陥っている中、市の方針としてお願いした。理解してほしい」と述べるにとどまった。

 要請に先立って、馬殿敏男(公明)、古谷仁(社民)、草野義雄(共産)の3市議が「補助金削減反対に向け共に頑張りましょう」と一行らを激励した。

 「地域の民族教育の存亡を左右する重大な運動」と位置付けている学校側と保護者らは3日、補助金削減に反対する請願書を市議会議長に提出する予定だ。

[朝鮮新報 2003.12.2]