総連中央元財政局長への論告求刑に対し在日本朝鮮人人権協会会長が談話発表 |
2001年11月に検察当局が朝銀問題を口実に、不当に拘束して起訴した総連中央の康永官元財政局長に対する論告求刑(12日、東京地方裁判所)が行われたことと関連し、在日本朝鮮人人権協会が16日に発表した柳光守会長談話は全文以下のとおり。 日本検察当局はさる12月12日、一昨年11月に朝銀東京信用組合本店営業部に開設された仮名口座預金に係わる「業務上横領容疑」で逮捕し、今日まで2年以上拘留しつづけてきた康永官朝鮮総連中央本部前財政局長に対し懲役7年を求刑した。 検察当局の求刑は、過去2年間にわたって行われた公判における無罪を求める弁護側の主張等をことごとく無視した不当なものである。 検察側は、今回の事件の重要な点である「横領金」の入出金問題で、これが仮名口座を通じて行われたと主張するが、この仮名口座は当時の朝銀東京側が開設し、管理していたものであり、康永官氏が当初よりこの口座の存在すら知らなかったということは公判の中でも明らかになっている。 しかも公判で弁護側証人はもとより検察側証人でさえ、当該横領事件と康永官氏がまったく無関係であると証言しているにもかかわらず、このような論告求刑をなしたことは、自ら準備した証人の証言までも否定する矛盾したものである。 今回の検察当局の康永官氏に対する論告求刑は、朝鮮総連に対する予断と偏見、ひいては朝鮮民主主義人民共和国に対する敵対的意図を持ってなされたと言わざるをえない。 そのことは検察当局が弁護団側の15回にわたる保釈請求を「罪証隠滅」「逃亡のおそれ」を口実に反対していることにもあらわれている。 一方、司法当局もこのような検察当局の要求をとりいれ、これまで保釈を認めない態度をとりつづけている。 とりわけ東京高等裁判所は東京地方裁判所の係属部が8回も保釈決定を出したにもかかわらず、その判断を尊重せず保釈を却下している。 一般的に刑事裁判における被告人は、検察側申請の証人尋問を含む主な証拠調べが終われば保釈が認められるのが通例である。 しかしながら司法当局は検察側、弁護側申請の証拠調べがすべて終わったにもかかわらず、「今後もなお新たな証拠請求をすることが考えられないではなく、罪証の隠滅を図る疑いが消失したとまではいえない」(東京高裁による8回目の保釈却下理由)というきわめて抽象的かつあいまいな理由で、右下肢膝下切断の可能性がある重度の関節炎、心臓病(解離性大動脈瘤)などの病状により手術が必要な被告人を引き続き勾留する異例かつ異常な態度をとっている。これは日本国憲法、刑事訴訟法、国際人権規約に照らしても不当きわまりないものである。 「罪証隠滅」、「逃亡のおそれ」うんぬんは、康永官氏に対する長期拘留、並びにその間の公判における検察側申請の数々の証人尋問が行われた事実や、逮捕前の長期病院治療、右膝機能喪失による歩行困難な現状、さらに同氏が在日朝鮮人社会で公的な役割を果たしてきた経歴に照らしてみても強引な言いがかりである。 今回の求刑ならびに度重なる保釈却下の決定は、民族金融機関、権益擁護機関に対する差別、在日朝鮮人に対する民族的偏見として糾弾されてしかるべきである。 私たちは司法当局が政治的かつ恣意的な判断を排し、弁護側の主張するとおり康永官氏に対し無罪の判断を示すとともに、人権尊重および人道的見地から同氏の拘留を取りやめ直ちに保釈するよう強く求めるものである。 [朝鮮新報 2003.12.18] |