top_rogo.gif (16396 bytes)

〈インタビュー〉 北野弘久日本大学法学部名誉教授

総連中央会館への固定資産税課税問題は「北への反感」利用した「制裁」

 東京都千代田区の朝鮮会館に都が固定資産税等の不当な課税処分を課したことに対し、総連中央は9月3日、これを不服として石原都知事あてに審査請求を行った。その第1次審議が12月11日に行われたが、被審査請求人である千代田都税事務所長が欠席するなど、都側は「初めに結論ありき」の無礼な態度に終始。弁護団の怒りを買った。今回の課税処分はなぜ不当なのか、石原都知事が突然、課税処分を課した背景には何があるのか、などについて日本大学法学部の北野弘久名誉教授(72)に聞いた。

 ―今回の課税処分はなぜ不当なのか。

 課税対象になった朝鮮総連の固定資産(建物、土地)は、約40年間、実質的に朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)の在外公館として認定されてきた。在外公館に課税しないというのは国際法でも確立されており、現に1964年に締結されたウィーン条約では、在外公館、施設への非課税が明文で規定されている。

 朝鮮総連が朝鮮の在外公館としての役割を果たしてきたことから、美濃部都知事は「市民外交」という立場で72年4月、「64年にさかのぼって」固定資産税、都市計画税の免除を決定した。これは「公知の事実」だ。以後の鈴木、青島都政下でも自動的に免税は実施されてきたし、石原都政下でも1期目および昨年分まで免税扱いにされてきた。

 朝鮮は1991年に国連に加盟し、世界150余カ国と国交を結んでいる。日本とは昨年9月、「平壌宣言」に調印した。こうした中で免税扱いにすべきだという流れがむしろ強まっている。

 免税の法的根拠は都税条例134条1項である。同条1項2号は、「公益のために直接専用する固定資産」に対しては、固定資産税を減免すると規定している。

 さらに、今回の処分に先立つ今年5月20日に行われた調査時にも、都の担当官は変化がないことを確認している。

 それをいきなり、知事の感情が変わったということで課税するのは、まさに「狂気」としか言いようがない。

 ―今回の課税処分を違法とする法的根拠は。

 まず、先ほども述べたように、これは都税条例134条1項違反である。総連側の免税申請によって、都側はビザ発給事務部門の固定資産相当分の免除を行った。だが、在外公館の仕事はビザ発給だけではない。朝鮮の方の日本への受け入れの身元保証、在日コリアンの基本的人権の擁護、通商取引への配慮、文化交流などさまざまな仕事をしている。つまり、総連の建物すべてがそういった公益の用に供されているわけで、建物の一部だけ免税にするのはおかしい。

 2点目は、行政は人々を裏切ってはならないという「信義誠実の原則」にも反しているということだ。

 第3に、「法の下の平等」を定めた憲法第14条に違反する。

 中国との国交回復以前は、「中日備忘録貿易弁事処駐東京連絡処」も免税扱いだった。「台北駐日経済文化代表処」なる台湾の施設は現在も免税措置を受けている。にもかかわらず、これらと同様の施設である朝鮮総連だけがなぜ減免の対象からはずされるのか。これは国際的にも日本国の「恥」と考える。

 ―石原都知事はなぜ、突然課税処分を課したのか。

 都知事の行為の背景には、朝鮮、中国への誤った偏見、加えて朝鮮に対しては「拉致問題」がある。「北への反感」を利用して知事の権限で一種の「制裁」を加えようとしている。しかし、これは完全に間違っている。

 「北朝鮮憎し」の知事の個人的感情と、朝鮮総連への課税問題とは明白に区別すべきだ。

 日本は法治国家であり、「法の支配」の問題として冷静に解決すべきだ。

 今回の措置は、先の3点の違法行為のほか、公務員による職権乱用、不法行為とも言える。弁護団としては、場合によっては、単に課税処分の取り消しだけでなく、こうした面の法的措置、つまり刑事告発、損害賠償請求も検討している。(整理、文聖姫記者)

[朝鮮新報 2003.12.18]