発足する盧武鉉新政権〈上〉−「政治革命の始まり」 |
2月25日、南で盧武鉉新政権が発足する。「彼が大統領選で勝利を収めたことは、この国で政治革命が始まったといっても過言ではないだろう。彼の当選は彼個人の単純な勝利ではない。熱烈な支持者を中心とした国民的な声援がなかったら、彼の当選は絶対に不可能であっただろう」(ハンギョレ新聞2002年12月19日付)との指摘に見られるように、盧政権の発足は南社会の変化を如実に物語っているといえる。 当選の要因と意味 ハンギョレ新聞は盧氏の当選直後から、勝利要因や当選の意味について数回にわたって分析した。勝利要因について同紙は、盧武鉉氏がリーダーとしての地位を固めるとともに候補の一本化によって競争力を高めたことが決定的だったと指摘。そして、政治改革に対する国民の期待とインターネット政治の拡散など時代の流れと、有権者の変化への欲求を正確に捉えた選挙戦略が功を奏したと分析した。 また嶺南地方(慶尚道)出身にもかかわらず、湖南地方(全羅道)に主要基盤を持つ民主党に所属し、地域主義をなくそうと努力してきた政治経歴が有権者の間に「盧武鉉は政治的な利害関係より所信と原則に沿った政治を行ってきた」と評価され、嶺南地域の有権者たちも「民主党は嫌だが、盧武鉉はどこか違う」という期待感を抱いたと指摘した。 盧武鉉氏の勝利を語るうえで、ITを駆使する若い世代の「活躍」も見逃せない。 南に初めて誕生した政治家のファンクラブ「盧武鉉を愛する人々の集い」は、その代表的な存在と言える。 俳優の明桂南氏や文盛瑾氏を中心とするこの集いは、自然発生的に生まれたもので携帯やEメールを活用して盧武鉉氏の当選を訴えた。 盧武鉉氏の当選は単純に民主党が再執権に成功したというだけでなく、それより以上の多角的な意味を持っている。まず、南社会でひとつの流れを形成しつつあった変化への欲求が、国民参与という形で爆発したと言える。前述した「盧武鉉を愛する人々の集い」やW杯の時の「赤い悪魔」、最近の反米ろうそくデモなどはすべて古い秩序に対する拒否であり、自発的かつ創意工夫の凝らされた情熱が大統領選の局面で、「盧武鉉」という象徴を通じて噴出したのだ。 盧氏の当選はまた、これまで南社会に蔓延していた冷戦的、保守的イデオロギーの鎖を断ち切り、多様な理念が共存する「寛容の時代」を予告するものとの捉え方もされている。 つまり彼の当選はこれまでの地域葛藤を解消し、国民統合を成し遂げられるという希望的なシグナルも込められていると言える。 20〜30代の強い支持 一方、盧氏の当選により南社会の「主流」が変わったとの見方もある。 これまでの南社会における「主流」は、世論を作り拡大再生産できる能力と手段を持つ階層だった。つまり少数の権力層と巨大メディアの論客、保守言論を通じて社会的名声を高めていった海外留学体験を持つ学者たちなどであった。彼らは自身の利害関係に沿って自らの意見を「世論」として送り出し、一方的教育と全体主義的権威に慣れた一般市民はこれをそのまま「自分たちの考え」として受け入れてきた。 こうした状況で、「非主流」が「主流」に勝つことができたのは、有権者の48.3%を20〜30代が占め、高卒者の大学進学率が26.9%(1970年)から74.2%(2002年)とおよそ3倍になったことが挙げられている。 既成世代と違い多様な教育を受けた若い世代は、大学で社会を批判的に見つめる視角とインターネットを利用した情報収集力を身に付けた。 また、民主正義党が盧泰愚を大統領候補に指名したのを受けて、「独裁打倒」「大統領直接選挙制獲得」をスローガンに、全国各地で180余万の市民がデモ行進を行い、直接選挙制を勝ち取った87年6月29日以後に大学生活を送った世代が、自らの政治的な考えを明らかにするうえで身の危険を感じなくてもよくなったという点も大きく作用した。 個性と自己主張を強調し既存の権威をそのままでは受け入れない新世代文化が、政治文化の現場でも反映されたと言えよう。 盧武鉉氏の得票率は48.9%(投票率は史上最低の70.2%)。半数の支持しか得られなかったと言える。 しかし、市民の中では「核問題は外交的に、平和的に解決すべき」との意見は91%、「北への人道支援は引き続き行うべき」との意見が64%にも達しており(民主平和統一諮問会議が昨年11月30日に行った設問調査)、62.3%が「核問題は平和裏に解決される」との楽観的な展望を抱いている(世論調査専門機関の「TNS」が昨年11月23、24日に行ったアンケート調査)。 これまで、南社会を支配してきた「主流」=既得権世代、階層と、そうでない「非主流」世代、階層の距離が「非主流」の突き上げによって縮まり、融合しつつあるということが、盧武鉉氏の当選という事に象徴的に現れたといえよう。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2003.2.21] |