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〈開城探訪記−上〉 進む経済協力の準備

 昨年11月に開城工業地区法が制定されてから3カ月。境界線都市の開城市では現在、北南経済協力事業の一大計画が準備されている。2月21日には、工業地区設置の主体である鄭夢憲現代峨山会長一行が現地を踏査、着工への展望が開けた。平壌に常駐する本紙記者はこれに先立つ2月中旬、開城市を訪れ、工業地区の設計と現況を取材した。開城探訪記を2回に分けて連載する。(平壌発=金志永記者)

違いを超えて

北南の経済協力が進む開城市

 「私たちの構想はすべてここに凝縮されている」。チョン・ヨンチョル開城市人民委員会対外事業局長(44)は、「開城工業地区法」の全文を取り出しながら語った。

 「平たく言えば工業地区は、社会主義でも資本主義でもない北と南が合意した法に基づいて運営される地区」

 チョン氏の説明によると、北側は工業地区法を作成するにあたり、まず南側が提示した法案を慎重に検討した。民族経済協力委員会の法研究者などを中心としたチームが、南側の草案を参照しながら、他国の特区に関する研究も行い「世界的にもっとも競争力ある特区形式」を模索した。

 チョン氏は、北側労働者の給料問題を例にあげながら、北南が工業地区の構想を具体化する過程で互いの価値観や生活様式の違いが表面化する場合について説明した。

 「南側の案は私たちのより基本給の額を低めに設定し、生産実績に沿って報酬を追加するというものだった。はじめは抵抗感があったが、話を聞いてみると一定の合理性があると思えた」

 一方、工業地区法には市場原理を至上とする「自由経済」とは違った、「社会主義的色彩」を帯びた部分もあるという。チョン氏は、「開城は思想と制度の違いを超え一つになる手本となるだろう。統一がここから始まる」と語った。

ふくらむ思い

 開城には現在、6つの被服工場があり2つは在日同胞との合弁で運営されている。そのうちのひとつで、年間20万着の男性用スーツ、コートを生産する松都被服工場のソン・ジョンチョル支配人(54)は、「取引相手はすべて日本の業者。製品の質や納期などで問題が発生したことはない」としながら、「熟練工のおかげで生産能力が保たれている」と話す。

 最近、開城では同工場の給料が話題になっている。昨年の経済管理改善措置により「働いた分だけ分配される原則」が貫徹されたおかげで、給料が一気に上がった。ソン支配人によると、「これまでは契約を結んで材料がたくさん入ってきても、(仕事が増えるだけなので)労働者はあまり喜ばなかった。しかし、最近は仕事に対する欲が出てきた」という。開城市では今後見込まれる生産増のため、さまざまな措置をとっている。

 労働者の通勤に使われるのは連結工事が進む北南鉄道。鉄道が連結されれば、開城駅以南には新たに2つの駅が設置される。

 開城駅長を30余年務めてきたチョン・ミョンドクさん(62)は、「北南の鉄道が連結され開城に工業地区が創られると聞いて感慨無量だ。統一への思いが膨らむと同時に、新たな経済圏の誕生に興奮を覚える」と語った。

 連結による利用者の増加に備え開城駅を改築しようとの意見も出ている。

 「老いても体が許す限り務めなければ。新しい駅舎で働きたいから」

 チョン駅長は微笑んだ。

[朝鮮新報 2003.3.22]