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朝鮮の2カ所に米支援−NGOラブ・アンド・ピース藤澤房俊代表に聞く

 1月の世界食糧計画(WFP)による緊急要請でも明らかなように、朝鮮はきわめて厳しい食糧不足に陥っている。その朝鮮への食糧支援のために、3月13〜20日に現地を訪れたNGOラブ・アンド・ピース代表の藤澤房俊氏(東京経済大学教授)に話を聞いた。(談、写真提供=NGOラブ・アンド・ピース)

効率的な方法で

乳幼児のいる世帯を中心に配給(黄海北道遂安郡)
倉庫に収められた支援米(黄海北道遂安郡)

 WFPは、平地が比較的多く稲作が盛んな南部と西部では食糧事情は比較的ましだが、山岳地帯と北部、北東部は食糧の入手がきわめて困難であると報告している。そこで、今回の支援は「最も必要な場所に、最も必要な人々に」を心がけ、江原道安辺郡、黄海北道遂安郡の2カ所に限定した。

 支援米の調達は、朝鮮の収買糧政省の下部組織であるチョンギル貿易会社が購入した中国米を、受け入れ機関の朝鮮対外文化連絡協会(対文協)を通じて、ラブ・アンド・ピースが購入。売買契約は、チョンギル貿易会社とラブ・アンド・ピースが直接行った。この方法は、対文協としては初めてのケース。米の品質が確実に保証され、適切な価格で購入でき、輸入手続きなどでトラブルが生じないなど、非常に効率的だった。支援米は全35トン。

 3月16日午後に平壌を発ち元山(江原道)に向かった一行は、17日午前8時に最初の支援場所、江原道安辺郡に向かった。元山から50キロメートルほどの所にある安辺郡は昨年9月に水害を被った地域。被害家屋は795件、家屋を失った住民510人、耕作地被害面積5140ヘクタール、穀物損失量は9855トン。

 安辺郡には35トンのうち、25トンの支援米が届けられた。配給は、託児所、幼稚園の他に、乳幼児、妊婦、病人、高齢者、自然災害を受けた人にと頼んでおいた。

支援の礼に干し柿

配給所からリヤカーで米を運ぶ託児所、幼稚園の職員(江原道安辺郡)

 江原道水害被害対策委委員長の案内で、まず郡内に4カ所ある託児所の一つ「第一託児所」を訪れた。そこでは、80人の子どもを午前8時から午後6時まで預かり、午前と午後の2回、食事を提供するとのことだった。年齢に応じて1日150〜300グラムの米、14日分の支援となった。

 WFPでは、1日1人当たり270グラムの供給が必要としているが、この量ですら人間が生きていくために最低限必要とされるカロリーの45%でしかない。今回の支援米がその量にも達せず、しかもわずか14日分と聞いて、何とも言えない無力感を感じた。

 配給所も訪れたが、そこでは乳幼児・病人のいる世帯への配給を確認した。託児所、幼稚園の職員が小さなリヤカーで配給米を運ぶところを見た。

 江原道水害対策委員会から、支援のお礼として山のような干し柿が出された。食糧支援で訪れたのに、このような負担をかけたことを詫びて辞退したが、「私たちのできる感謝の気持ち」と強く言われ、ありがたく頂くことにした。

5月が最も厳しい

配給を受ける人々(江原道安辺郡)

 この日の午後3時半、平壌から約65キロメートルに位置する黄海北道遂安郡に着いた。まさに岩山だらけの山村。農業生産物はトウモロコシがほとんどで、稲作が15%、サツマイモが少しということであった。現在の配給事情は、1世帯トウモロコシが1日200〜250グラムで、それを粉にしてお粥、チヂミなどを食べるとのことであった。遂安郡への支援米は10トンで、ここでも託児所、幼稚園、乳幼児、病人のいる世帯へ優先的に配給される。

 水害被害対策委員会の責任者の案内でモニターリングを行った。最初は児童数184人、職員17人の遂安第一託児所だ。女性責任者の説明によれば、午前8時から夕方まで子どもを預かる。1日3回食事を出すのが規則だが、現在は1日2回。1回につき50〜150グラムを年齢に応じて食べさせるということだった。

 日朝関係は今、凍土と化している。その凍土を下から溶かしていく人間愛こそが、真の日朝関係を作り出していくのではないだろうか。食糧支援は外交カードではなく、その一つのきっかけになると思う。

 6月初頭にジャガイモの収穫が始まるまでの端境期であり、最も厳しい食糧不足に陥る5月頃に、再び朝鮮の「最も必要な場所、必要な人々」に支援米を届ける予定だ。

 募金は、郵便振替(口座名・ラブ・アンド・ピース)00140―4―364885。(文聖姫記者)

[朝鮮新報 2003.4.7]