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イラク、イラン、朝鮮」「体制転覆」へ先制攻撃−ブッシュ・ドクトリンと「5027−03」

ためらわずに単独で行動

 ブッシュ政権は不当にもイラクと共に朝鮮、イランを「悪の枢軸」(2002年1月の大統領年頭教書)と規定し、今回のイラク戦争に見られるようにこれら諸国に対する軍事力を行使した「体制転覆」「親米政権樹立」を国家戦略として定め推進してきた。

 そのために「(テロ組織や『ならず者国家=イラク、イラン、北朝鮮』との戦いにおいて)国際社会の支持を得るための努力は続けるが、必要に迫られれば単独での行動もためらわず、先制的な行動で自衛権を行使する」(「米国の国家安全保障戦略」、2002年9月)というブッシュ・ドクトリンを採択した。

 ボルトン国務次官が最近、アメリカ・イスラエル広報委員会(AIPAC)で「イラク戦争が終われば、イランの核兵器開発プログラムが北朝鮮と同じ比重で扱われるはずで、これは米国にとって最優先になるだろう」と語り、またライス大統領補佐官も同時期に別の場所で「イラク戦争後、米国は(北朝鮮、イランの)大量破壊兵器に対し、世界がどうすれば組織的に対応できるかについて講じていくことになるだろう」と明言(いずれも4日のワールドトリビューン・ドットコム)したことは「核兵器開発」阻止を口実にしたイラン、朝鮮に対する軍事攻撃を念頭に置いたものと見ることができる。

 こうした発言と時を同じくして、ブッシュ政権が朝鮮の「核問題」論議を国連安全保障理事会に呼びかけた(9日に開催)のはその表れだといえる。だから朝鮮外務省スポークスマンは6日声明を発表し、「国連安全保障理事会でのわが国の核問題論議は戦争の前奏曲だ」と警鐘を鳴らしたのである。

 また、イラク攻撃を前後して、南朝鮮の軍事境界線一帯などで駐留米軍と南朝鮮軍が合同でフォール・イーグルなどの軍事演習を展開したのは、「年例」「防御」演習という米軍側の言い訳とは裏腹に、ブッシュ・ドクトリンに基づく対朝鮮先制攻撃、より具体的には平安南道寧辺一帯の原子力施設、咸鏡南道舞水端里などのミサイル発射場などに対する攻撃を想定したものといわざるをえない。

「5027」をさらに深化

 昨年10月、ケリー・ブッシュ大統領特使一行の訪朝後、突如として彼らの口を通じて持ち出された「濃縮ウランを使った核兵器開発」後、労働新聞などは米軍が朝鮮に対する先制攻撃を前提にした作戦計画「5027―03」を策定していると指摘。ブッシュ政権があくまで「核兵器開発」を口実に軍事攻撃を辞さないのなら、神聖な国の自主権を守るために軍事力で対抗せざるをえないと再三再四、警告を発してきた。

 では、作戦計画「5027―03」とはどういう内容のものなのか。むろん、全容は極秘にされているが、94年の核開発騒動の時に米軍が立案していた5段階からなる対朝鮮攻撃作戦計画「5027」をさらに深化させたものであるという。

 当時、南朝鮮の李炳台国防長官が国会国防委員会で公表(94年3月)した「5027」は、次のようなものである。

 第1段階(戦争直前)=米本土などから南朝鮮に米軍部隊増援。

 第2段階(南進阻止)=軍事境界線一帯での朝鮮人民軍の侵攻を阻止。合わせて平壌など朝鮮側の後方戦略拠点を攻撃。

 第3段階(撃滅)=朝鮮人民軍の主力を撃滅、元山、南浦などの海岸地帯からの上陸作戦を行い北進。

 第4段階(占領)=清川江一帯に進出、平壌を占領し軍政実施。

 第5段階(終戦)=南朝鮮主導下に朝鮮半島統一。

 この作戦には、米軍だけで陸軍5個師団、海兵隊2個師団など69万人、軍用機1600機、艦船160隻が投入されることになっていた。

 クリントン政権が94年5〜6月、この計画に基づき、まずは寧辺などへの限定空爆から開始しようとしていたことは米政権関係者の証言によって明らかになっているが、最終的に米軍を含む100万人以上の死傷者が出るというシミュレーション結果によって断念するに至った経緯がある。そして、カーター元大統領が訪朝し金日成主席と会談、危機は回避された。

南朝鮮軍を前面に配置

 「5027―03」はこの時の(軍事攻撃に踏み切れなかったという)教訓を踏まえ、@大規模戦闘を回避=米軍死傷者を極力出さず、また米軍ではなく南朝鮮軍を前面に配置、「同族戦闘」を前提にする、A原子力、ミサイル施設への限定的攻撃、B北の火力重視・特殊部隊作戦に対処して小型戦術核の使用(火力破壊)、特殊部隊壊滅のための先制攻撃、などの3つが柱となっているという(「国防長官が命じた『対北朝鮮新戦略』」月刊現代2003年5月号)。

 フォール・イーグル終了後も、演習のために派遣したステルスをそのまま南朝鮮に継続配備。また、演習開始と時期を合わせ3月上旬にグアム・アンダーセン空軍基地にB1、B52爆撃機24機を前方配備、そして日本海上自衛隊がイージス艦2隻の東海常駐を決定したことなどは「5027―03」の存在とは決して無縁ではない。ちなみにグアムのB1、B52は発進から3時間弱で朝鮮爆撃が可能になる。(厳正彦記者)

[朝鮮新報 2003.4.12]