そこが知りたいQ&A−今回の最高人民会議の特徴は? |
Q 3日、平壌で開かれた最高人民会議第11期第1回会議では何が決定されたのか。 A 金正日総書記が朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長に再び推戴された。 また、国家指導機関を選挙し、金永南最高人民会議常任委員長をはじめ16人の副委員長、委員などと、趙明禄国防委員会第1副委員長をはじめ8人の副委員長、委員が選ばれた。さらに朴奉珠氏を総理とする内閣メンバーが任命され、中央検察所、中央裁判所の所長なども選挙された。 会議ではまた、正当防衛手段として核抑止力を維持し、引き続き強化していくことを内容とする決定「朝米間の核問題に関連して朝鮮外務省が取った対外的措置を承認することについて」が全会一致で採択された。 Q 今回の会議の特徴は何か。 A 会議は、朝米間の核問題をめぐって、朝鮮半島情勢が極度に緊張する中で開かれた。 この会議で、金総書記が国家最高ポストの国防委員長に推戴されたことは、朝鮮が引き続き軍事重視の「先軍路線」を歩むとの意志を内外に示したことになる。 その脈絡で、外務省の措置、すなわち核抑止力強化の決定が採択され「当該の措置を取る」ことにした。 朝鮮は8月末の6者会談を、「米国の対朝鮮敵視政策の転換意図を確認する場」だと位置付けていたが、「米国がわれわれとあくまで平和的に共存しようとせず、共和国を完全に武装解除させようと企んでいる」(決定)ことを確認。その判断の下に新たな政策判断を下したと言える。つまり「対話には対話で、強硬には超強硬で」対応すると公言してきたが、後者を選択したと言える。 「核抑止力の維持、強化」が何を示すのか、については言明を避けているが、日本の国会にあたる最高人民会議でこれを容認したことは、核抑止力の強化を新たな段階に進める意志を内外に宣言したことになる。重大な決定だ。 Q 会議決定について、日本のメディアはあまり報じなかったが。 A 最高人民会議の機能、そもそも決定の意味がわからなかったのではないか。日本のメディアの軽薄さがよくわかる。 一方、事の重大性に気づいているバウチャー米国務省報道官は「代表性、独自性のある機構とは思えない」と最高人民会議の存在そのものに疑問を呈し、南の丁世鉉統一部長官は「(核抑止力強化は)政策にはつながらないだろう」と世論沈静化に務めた。あまり騒がれたくないという南、米の意図がうかがえる。 Q 人事では、経済に明るい人物が登用されたとの指摘がある。 A 根拠となっているのは、朴奉珠氏を首相とする新内閣の発足だ。2人の副総理も変わり、経済政策の頭脳ともいえる国家計画委員長、重要ポストの採取工業相、金属機械工業相、化学工業相も交替した。 龍川食糧工場の支配人だった朴氏は、党中央委員会候補委員(80年)、党軽工業部副部長(93年)、党経済政策検閲部副部長(94年)を経て98年から化学工業相を務めた。昨年10月には経済視察団の一員として南を訪れ、経済通として知られている。こうした経歴を踏まえ南では、「経済復興に本腰を入れる意志の表れ」(連合ニュース)と報じている。「南北経済協力拡大の布石」などとの希望的観測も出ている。 内閣は経済を担当する。今後の仕事ぶりに注目したい。 Q 延亨黙氏が国防委員会副委員長になったが。 A 軍部以外からの抜擢で、注目される。 98年の新設時から同委員会委員になったが、もとは党重工業部副部長(60年)、党重工業担当書記(86年)、政務院(現内閣)総理(88年)などを経て92年からは慈江道党責任書記職にある。 慈江道といえば軍需産業。総書記の関心も高く、「先軍政治」を行っている朝鮮ではたいへん重視されている道だ。その道党責任書記であり重工業を担当したことのある延氏が副委員長に登用されたことから、軍需産業そのものを発展させると共に、軍が中心になって経済復興を推し進めていくという意図が垣間見える。朝鮮ではこの間、鶏工場(養鶏場)、ナマズ工場の建設など、まず軍が率先、模範を作り、これを一般化する形式が定着している。 内閣メンバーを代表して宣誓を行った朴首相は「先軍路線」の貫徹、経済力の構築などに尽力することを誓った。軍の強化と経済復興が最重要課題だろう。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2003.9.19] |