〈担当記者座談会〉 新たな展開迎える朝米関係 |
朝米間の核問題が新たな展開を迎えている。現状と今後の展望について担当記者が話し合った。 ニューヨーク接触の再開 A 中国の呉邦国全人代委員長が平壌を訪問、金正日総書記と会談を行った。朝中双方は「6者会談過程の継続」に原則的に同意したという。関係国の間では現状打開に向けた動きが活発化しているようだ。 B 朝鮮が「書面不可侵保証」に関するブッシュ大統領の発言を「考慮する用意がある」との立場を表明した時点で、ある程度予想された会談結果だ。朝鮮の立場表明は、呉邦国委員長の訪朝直前に行われた。中国ナンバー2の要人を迎え入れた以上、朝鮮としては6者会談に対して何らかの立場を示さなければならなかった。 C タイミングとしては、確かにその通りだ。4月の3者会談、8月の6者会談の前にも中国の要人が平壌を訪問したが、中国が朝米の「仲裁者」として外交力を充分に発揮できたのかどうか疑問だ。というのも3者会談、6者会談ともに朝米間の議論は物別れに終わったからだ。 A 10月上旬、朝鮮外務省スポークスマンが「核問題を利己的目的に利用している」として、拉致問題に固執する日本の6者会談参加に反対する立場を表明したことがあった。核問題をめぐる関係国の動きを見ていると、多国間交渉の枠組みの中で「自国の利益」を追求しようとする国は、何も日本だけではない。 B 今回、全人代委員長の訪朝を機に「中国側は朝米双方の憂慮が必ず同時に解消されなければならないと強調」(朝鮮中央通信)したという。中国が朝鮮側の主張に対する支持を一層明確に示した形だ。 A 8月の6者会談が決裂した時点で、「仲裁者」が果たせる「役割」は限られていた。朝鮮側が次回交渉に興味を抱くような姿勢の変化を米国が示せるかどうかが、最大のポイントであったといえる。そういう意味では、「書面不可侵保証」をめぐる朝米間の動きが、中国全人代委員長の平壌訪問に先立って表面化した事実は注目されるべきだ。 朝鮮側は、米国の提案を考慮する用意があるとの立場をニューヨークの国連代表部と米国務省間の接触ラインを通じて伝えた。このラインは今年8月頃から凍結されていたが、米国側は今回、ニューヨークでの接触を重視し、これを続ける意向を示したという。 強硬姿勢の軟化 A 朝米が意思疎通のためのチャンネルを稼動させたことは意味がある。事態の急進展は、朝鮮側が「不可侵条約締結」という要求を事実上撤回して米国に譲歩した結果との見方もあるが、9月以降の核問題の推移を見れば、むしろ米国の方が外交的に追い詰められていたのではないか。 朝鮮は9月の最高人民会議で「核抑止力の維持と強化」を「政策化」した。10月には「核燃料棒の再処理完了」など既存路線の進展状況について言明し,外交攻勢に打って出た。 C 朝鮮の「核抑止力」が「公開」されるかもしれないという緊迫した状況の中で、米国は大統領本人が「書面不可侵保証」を提案するというカードを切ったわけだ。 当初、米国は朝鮮の一方的な譲歩を求め、対話と交渉を否定し続けたが、後になって多国間協議を主張するようになった。会談が始まると「核の放棄に代償は与えない」と強弁していたにもかかわらず、今度は「書面不可侵保証」を持ち出した。客観的に見れば、米国の強硬姿勢は徐々に軟化している。 B 朝鮮側に態度の変化は見て取れないだろうか。現在、朝鮮は従来の主張であった「不可侵条約締結」に一切言及していない。 A 外務省スポークスマンの談話などを見る限り、朝鮮の立場には一貫性がある。核問題は朝米間の敵対関係を清算することによって解決すべきというものだ。そして朝米国交正常化と両国の平和的共存は「同時行動原則に基づいた一括妥結方式」によってのみ実現可能だと主張している。 C 朝鮮が「不可侵条約締結」を求めたのは、関係改善のプロセスにおいて朝米双方が「敵対意志の放棄」に関する「法的拘束力を持った約束」を取り交わすことが不可欠だと考えたからだろう。現在は、そのようなプロセスに着手することが当面の課題だ。 実際、朝鮮側は8月の6者会談で朝米双方が問題解決のスタートラインに着くための提案を行っている。米国が「対朝鮮敵対視政策放棄の意志」を、朝鮮が「核放棄の意志」を表明しようというものだ。 「同時行動」の要求 B 朝鮮が「書面不可侵保証」を考慮するといったのは、8月の提案を念頭に置いてのことなのだろうか。そうであれば「書面保証」の見返りに、朝鮮が「核放棄の意志」を表明するということになる。「意志」の表明だけで米国が納得するかどうか。 A 米国が「行動」を要求するなら、朝鮮側も「行動」を要求するだろう。「不可逆的で検証可能な核の放棄」を求めるなら、朝米の敵対関係を「不可逆的」に清算するための約束が必要になる。単なる「口約束」では、朝鮮は動かない。「同時行動原則」とはそういうものだ。 「不可侵保証」の形式と内容をどのように具体化するかは、米国側の決断にかかっている。それによって朝鮮側の対応が定まると見るべきだろう。 B 米国が「同時行動原則」を認めるだろうか。ブッシュ大統領は「書面不可侵保証」について語ったが、「北朝鮮の核放棄が前提」との立場は崩していないと伝えられている。朝米の立場が平行線をたどれば、次回の6者会談開催は難しいのではないか。 C 結局、どちらかが譲歩するしかない。現在の膠着状態が続けば、核問題は危機的な状況を招きかねない。6者会談の他の参加国もそれを望んでいない。平壌を訪問した中国全人代委員長も「対話による核問題の平和的解決」を強調した。 B 来年、大統領選挙を迎える米国が現時点で政策転換に踏み込むとは思えない。「対話」のポーズは示すが、問題の解決は先送りするという判断もあり得る。 C 核交渉のタイミングを計る余裕が米国にあるだろうか。2回目の6者会談が実現しなければ、朝鮮の「核抑止力」が何らかの方法で「公開」される可能性が高まる。朝鮮の決断によって、すでにカウントダウンは始まった。それが、現在のように核問題が急進展する要因になっていることはまちがいない。 A 「書面不可侵保証」で、朝米が歩み寄りを示したことは肯定的な兆しだ。米国が動けば、朝鮮も動く。そこに問題解決のカギがあるといえるだろう。(まとめ=金志永記者) [朝鮮新報 2003.11.6] |