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〈朝・日平壌宣言から1年〉 朝鮮の補償問題討議会談提案

公開された約42万人分の名簿を閲覧する平壌市民

 朝・日平壌宣言(2002年9月17日)は、「不正常な朝・日関係の正常化を実現するうえで重大な出来事」(同月22日付の民主朝鮮)だった。朝鮮外務省は1年が過ぎた9月16日に代弁人談話を発表し、両国の関係は「宣言発表時点よりも大きく後退し、極度に悪化した状態に置かれている」と指摘。朝鮮占領統治期間の「重大な人権侵害」に対する個別の謝罪とともに、被害者とその遺族への補償を日本政府に求めた。今月11日にも代弁人声明を発表。彼らの補償問題を討議するための政府間会談の開催を提案した。平壌宣言の合意に基づき、その後の10月、マレーシアで2年ぶりに国交正常化のための会談が再開されたが、その後はこう着状態に陥っている。こうした中、朝鮮側が提案した「補償問題を討議する会談」の意味について分析してみた。

日本で裁判も実施

 朝鮮外務省が提案した会談は、当面して確認された被害者の補償問題を討議するための政府間会談だ。

 日本外務省はこの提案について、「『補償問題』は平壌宣言で解決済みで、それだけを目的にした協議には応じられない」(朝日新聞12日付)と主張している。

 平壌宣言で双方は、財産および請求権を互いに放棄するとし、日本は正常化後に朝鮮に対して経済協力を実施することで合意をみている。今回、朝鮮外務省が提案した「補償問題」は、強制連行などの被害者とその遺族ら「個人に対する補償」だ。

 では、「個人補償」請求は有効なのか。日本外務省条約局長は1991年8月27日の参議院予算委員会で、「条約では、日・韓両国は国家として持つ外交保護権を相互に放棄した。(だが)いわゆる個人の請求権それ自体が国内的な意味で消滅したということはない」と指摘した。そのため、日本国内では90年代から「戦後補償」を求めて、数多くの裁判が行われている。

 また、これまでの朝・日国交正常化会談の中でも日本は、「個人の請求権」は放棄できないとしながら、補償を拒否してきた。平壌宣言でも「個人の補償問題」については触れられていない。したがって、「個人補償」はあくまで有効だ。

「時効ない」と国連決議

 「個人補償」の対象について朝鮮外務省は、「日本が朝鮮占領統治期間、朝鮮人民に働いた独立運動をはじめ政治的およびその他の理由による弾圧と虐殺、強制連行、性奴隷犯罪、生体実験、強制移住、強制追放、『創氏改名』の強要など、すべての重大な人権侵害」を被った被害者とその遺族と規定した。ちなみに「重大な人権侵害」について、94年3月4日の国連人権委員会で決議されたファン・ボーベン国連最終報告書(南北朝鮮、日本、米国も賛成)では、「いかなる有効な救済も存在しなかった期間に関しては、時効法は適用されてはならない」としている。

 平壌では6日、朝鮮人強制連行被害者、遺族協会が結成され、日本にある朝鮮人強制連行真相調査団が入手した約42万人分の名簿を公開。被害者と遺族らは日本政府に、国家的な謝罪と補償、犠牲になった朝鮮人の消息と遺骸の調査を求めた。

 また朝鮮日本軍「慰安婦」、強制連行被害者対策委員会では、95年に続いてこのほど、被害者の証言集(2)を発行、被害の実態を暴露している。

重大な人権侵害

 11日の外務省声明を機に、北だけではなく南、海外の同胞も会談提案を支持し、日本の過去清算を求める声を高めている。

 「民族正気を打ち立てる国会議員の会」の金希宣会長(開かれたわが党)は、「日本が提案を拒否するのは、植民地支配を反省しようとしない姿勢の表れ」で、拉致のような政治的問題と絡める問題ではないと主張している。

 拉致事件について言えば、朝鮮側は事実を認め、謝罪を表明、責任者を処罰し、再発防止を約束。「すべて解決した」(4月14日発朝鮮中央通信)という立場だ。昨年10月15日には、5人の生存者が日本に一時帰国(本人の意思により滞在期間は10日間と日本側と約束済み)したが、まだ朝鮮には戻ってきていない。平壌宣言発表後、初めての合意事項を日本が破ったというのが朝鮮側の立場だ。

 また、「日帝強占(強制占領=植民地)下強制動員被害真相究明等に関する特別法制定推進委員会」の崔鳳泰執行委員長は、「日本政府は65年の韓・日協定(条約)で植民地の清算は終わったという立場だが、被害者らは補償を要求し続けている」と強調する。

 「韓・日条約」では、個人の補償問題については触れられてない。

 朝鮮人強制連行真相調査団の洪祥進朝鮮人側事務局長は、「日本は北南朝鮮の分断状況を利用して責任を回避してきた。国際社会でこれら重大な人権侵害は優先的に解決するべきだとしている。いまこそ日本は責任を負うべきだ」と語っている。(羅基哲記者)

[朝鮮新報 2003.11.15]