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朝日新聞社長にあてた抗議文

 貴朝日新聞社は、昨年12月28日付社告「おことわり」で、「北朝鮮という呼び方が定着したうえ、記事の簡略化もはかれる」とし、今後、ほとんどの記事で「『北朝鮮』という呼称を使う」ことを決め、今年の1月1日からそれを不当に実施しています。わたしたちは、これについて強く抗議し、ただちに中止するよう求めるものであります。

 国家の呼称問題は、決して慣習や便宜上の問題ではなく、その国の主権と権威を尊重するか否かの重大な外交問題であります。

 朝鮮民主主義人民共和国という国名は世界的に公認された主権国家の神聖な国名であり、わが国はこの国名で国連をはじめさまざまな国際機構に加盟しています。それゆえ、わが国は論評などで、日本でのみマスコミなどが「北朝鮮」という呼称を使いつづけていることについて、「わが国と人民を冒涜する、許しがたい主権侵害である」(2000年7月24日朝鮮中央通信)と非難し、是正すべきだと一貫して主張してきました。

 そもそも「北朝鮮」という呼称は、地理的に朝鮮半島の北と南を示す地域的概念であって、国名ではありません。したがって、「北朝鮮」の呼称のみを使用する場合、呼称の国家的次元と地域的次元を混同することによって、読者に誤った認識を与える過ちを犯すことになります。ひいては朝鮮民主主義人民共和国という主権国家の客観的実在性を主観的に否認することにもなります。一部に「北朝鮮」をわが国の正式な略称とする意見がありますが、それが議論に値しない詭弁だということは言うまでもありません。なぜなら、わが国の正式名称に「北」という表現はどこにもないからです。

 1970年代、冷戦下で朝・日関係が非常に厳しい状況にあったにもかかわらず当時の心あるジャーナリストたちは朝・日友好の思いから、われわれ朝鮮総聯関係者と相談しながら正式名称である「朝鮮民主主義人民共和国」の併記を実現させました。貴紙の今回の決定は、正確な現実を読者に伝え、朝・日関係改善に少しでも役立てようとした彼らの良心と貴重な過去の結実さえも踏みにじることになります。

 ましてや、金正日総書記と小泉純一郎首相の首脳会談が実現し、朝・日両国の最高指導者が、互いの正式国名を明記した歴史的な「朝・日平壌宣言」に調印した今日において、貴紙が今回のような決定をしたことは、相互信頼関係にもとづいて一日も早く不幸な過去を清算し国交正常化をはかろうとする「朝・日平壌宣言」にも逆行するものにほかなりません。

 貴紙は、今回の決定に並行するかたちで「北朝鮮の素顔」なる記事を1面に連載し始めました。それは、わが国から脱出した「亡命者」らの「証言」や南朝鮮の情報機関などの資料のみに依拠し、「否定的な部分」だけを一方的に浮き彫りにさせた不公正な偏向記事だと断じざるをえません。在日朝鮮同胞たちからは、この連載記事には、わが国のイメージを傷つけ朝・日関係改善に水をさそうとする意図や敵意さえ感じる、などの強い不満と抗議の声が上がっています。

 われわれは、貴紙が朝鮮半島と朝・日関係をめぐる新しい時代の流れを直視し、まずは、わが国の正式名称を従来通りに併記するとともに、結果的に日本国内で反朝鮮人感情を煽るような不公正な偏向記事の連載をただちに中止することを強く求めます。

 以上、わたしたちの求めに対し、貴紙が誠意をもって対応し、回答することを強く望むものであります。

[朝鮮新報 2003.1.24]