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コッソンイ作文コンクール1等作品−1

アボジの国、オモニの国(李由衣、南部初級6年)

 私は朝鮮人です。しかし、日本人でもあります。

 なぜなら、アボジ(朝鮮語で父)はチョソンサラム(朝鮮人)で、オモニ(朝鮮語で母)はイルボンサラム(日本人)だからです。

 幼い頃からアボジとオモニをアッパ、オンマと呼びながらも、自分が朝鮮人だとは知りませんでした。

 自分が朝鮮人だと知ったのは、朝鮮学校に入学してからウリマル(朝鮮語)やウリナラ(私たちの国、朝鮮)について学ぶようになってからです。過去にウリナラが日本の植民地だったという悲しい歴史を初めて学んだ時は、胸がとても痛みました。

 (アボジの国とオモニの国が戦うなんて…)。その時から私は授業の時、またいろんな話を聞く時、自分でも知らぬ間にある時はチョソンサラムの立場に立ち、またある時はイルボンサラムの立場に立って考えたり話すようになりました。

 チョソンサラムを差別するイルボンサラムがいると聞けば、腹が立って寂しくもなり、朝鮮学校と日本学校が互いに交流し、楽しく過ごす時はとても嬉しく思いました。

 私はすべてのイルボンサラムとチョソンサラムが、私のアボジとオモニのように仲よくなればどんなにいいだろうといつも思います。

 2学期が始まるや、ソンセンニム(先生)が9月17日、歴史上初めて日本の首相が平壌に行って金正日総書記と会うことになると教えてくれました。私はとても驚きました。ソンセンニムは、2人の話がうまく行けば、今後ウリナラと日本はとても近くなるとおっしゃいました。私はとても嬉しかったです。今度こそ本当にウリナラと日本が仲良くなると思いました。

 9月17日、学校で小泉首相が平壌に到着したというニュースを聞きました。その後、どうなったのかを早く知りたかったけれど、クラブ活動を終えてすぐに塾に行ったのでわかりませんでした。

 家に着いてオモニに聞くと、信じられない答えが返ってきました。

 テレビをつけると、ウリナラが日本の人を拉致したという報道が何度も繰り返されていました。

 私は信じられませんでした。

 信じたくありませんでした。

 オモニはご飯も食べず、憂鬱な表情でテレビの前に座っていました。今まで学校でこの話が出た時、ソンセンニムは絶対にないと話していたのに…。

 私は何がどうなったのか理解できませんでした。

 その時、突然電話のベルが鳴りました。オモニが電話を受け、はい、そうですか、わかりました、しかし、これからどうなるのでしょう? と聞きながら、長いため息をつきました。

 私はとても不安でした。頭の中で拉致、朝鮮、日本そして学校という言葉がぐるぐると回りました。

 その日の晩は胸の中があまりにも複雑でちっとも眠くなりませんでした。

 明くる日はオモニが学校まで送ってくれました。学校には制服を着ないで私服で行くことになりました。校門をくぐると、警察の車が停められ、警察官もいました。心臓がドキドキしました。

 この日校長先生は、全校生に「朝・日平壌宣言」の話をしながら、このような時に私たちをよく知らない人たちがおかしなことをすることがありえるので、気をつけなければならないとおっしゃいました。

 私は校長先生の話を聞いても心がすっきりしませんでした。教室に行くと、ソンセンニムも肩を落としながら入ってきました。

 ソンセンニムは、今まで正しいと思って言ってきたことが間違っていて本当に申し訳なかったと言われ、私たちのアボジ、オモニたちは今日までたくさんの苦労をしながらも、チョソンサラムとしての誇りと自負心を持って立派に生きてきた、だから君たちも朝鮮の子どもらしく、堂々と行動しなさいとおっしゃいました。

 その日からソンセンニムと一緒に登下校し、家に帰る時間も早まりました。

 ソンセンニムは毎日のようにこの問題について話をしてくれ、「朝鮮新報」や日本の新聞の記事を読んではわかりやすく説明してくれました。

 国と国との間、そして過ぎた歴史の難しい問題については知らないことが多く、理解することはできないけれど、胸の痛むことがあったことだけは事実です。(ウリナラと日本の関係がもっと早く良くなっていればこんなに悲しいことはなかったのに…)と何度も思いました。

 これから平壌宣言の内容通り、アボジの国である朝鮮とオモニの国である日本が早く国交を結び、仲よくなればどんなにいいだろうと心から思います。

 あの日からアボジとオモニは学校と私たちをたくさん心配し、私たちのために努力しています。私の目には力を合わせ、私たちを見守っているように映ります。

 私はそんなアボジ、オモニをとても誇らしく思います。

 ウリナラと日本も私のアボジとオモニのように互いを理解し、力を合わせて助け合う、そんな良い時代が早く来ればどんなに嬉しいことでしょう。

 その日が早く来ることを信じています!(初級部6年散文部門1等)

 本社が主催する在日朝鮮学生「コッソンイ」文学作品コンクール(在日本朝鮮人商工連合会など8団体が後援)が今回で25回目を迎えた。「コッソンイ」は朝鮮学校に通う児童、生徒たちを対象にした唯一のウリマル(朝鮮語)作文コンクール。今号から散文部門の1等受賞作品を紹介する。

[朝鮮新報 2003.2.21]