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普遍的な人権、平和教育を−歴史認識と東アジアの平和フォーラム(中)

「慰安婦」問題、各国教科書のジェンダー記述について報告された

 「歴史認識と東アジアの平和フォーラム」(2月27日〜3月1日、東京新宿区・早稲田大学国際会議場)の第2分科会では、「慰安婦」問題、各国教科書のジェンダー記述とそれを巡る問題をテーマに報告が行われた。

 南、中、日の発言者からは、「中学校教科書に描かれた〈近代日本の女性〉」(内籐寿子・恵泉女学園大学非常勤講師・日本)、「公民/家庭科教科書をジェンダー視点で検討する」(高月佳子・「男女平等をすすめる教育」全国ネットワーク・日本)、「韓国史の教科書と教育現場で表れた日本軍『慰安婦』問題」(梁美康・日本の教科書を正す運動本部常任運営委員長・南朝鮮)、「第2次世界大戦中の日本軍の反人道的な暴行」(卞修躍・中国社会科学院近代史研究所副研究員・中国)、「教科書問題と『男女共同参画』―右翼ナショナリズム勢力による『女性の人権』攻撃の実態について―」(米田佐代子・元歴史科学協議会代表委員・日本)の報告と、「2000年女性国際戦犯法廷報道を改ざんしたNHKに対する裁判」(東海林路得子・戦争と女性への暴力日本ネットワーク共同代表・日本)の特別報告が行われた。

「慰安婦」問題複合的に見る

 長年社会運動に身を投じ、2000年に東京で開かれた女性国際戦犯法廷にも関わった梁さんは、過去にジェンダー的視点から教科書が分析されることはほとんどなかったと話し、昨年から南朝鮮で適用されている第7次教育課程の中高等学校国史教科書を対象に、日本軍「慰安婦」問題をめぐる記述形態と記述観点を分析した。

 梁さんによると、日帝植民地時代に起こった日本軍「慰安婦」問題は、民族問題という次元からだけでは解決され得ない複合多端な観点を有している。「『慰安婦』問題は、民族問題、女性問題、階級問題、国家問題など、さまざまな問題が交差しているゆえに、民族受難の側面ばかりからアプローチすることは、この問題の本質を単純化しすぎる恐れがある」と言うのだ。

 そして、今後はさらに平和と人権の観点から、植民地戦争時に起こった日本軍「慰安婦」問題がどのように女性の人生を破壊し、戦争が民衆の人生にどのような影響を及ぼしたのかを記述する必要があると語った。そして、そうあることではじめて、市民団体の活動や国際社会の連帯活動などが、真の意味を持つようになり、それがまた、戦争を美化し、植民地戦争の妥当性を認めさせようと考えた扶桑社の教科書を克服する記述となる」と話した。

同じ過ち繰り返すな

 中国からの参加者・卞さんは「戦時中の日本国民は、日本軍国主義の被害者だという見方もあるが、日本の一般国民の被害は、日本によってもたらされた中国人民の被害とは完全に異なるもので、両者は相互に同等な存在や関係ではありえない」と指摘。国家としての日本と国民全体が、加害の歴史と真剣に向き合い、反省し、戦時の異常な民族心理を批判的にとらえ、軍国主義とファシズム主義国家としての意識形成を根絶しなければならないと強調した。

 また、米田佐代子さんは、「つくる会」と連動する右翼ナショナリズム勢力が、「男女共同参画」政策への攻撃を集中していると話し、「政府も『慰安婦』問題の解決を拒否し、有事法制をはじめ日本の軍事大国化を推進しているという点では、右翼ナショナリズムと連携している」と指摘した。

 参加者たちは、過去と同じ過ちを2度と繰り返してはならないという共通認識こそが、過去とは違う未来を創るうえで最も大切なことであることを確認した。

 コメンテーターの金富子・青山学院大学非常勤講師は「人間誰しも加害者になりうることを忘れてはいけない」と指摘。梁さんの報告に対し「歴史教育とともに民族を越えた普遍的な人権と平和教育を提唱しているということに賛意を表したい」と拍手を送った。関係者によると、本フォーラムの内容は、今後教育現場で活かされるよう、副読本、副教材としてまとめられるという。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2003.3.17]