定年後の人生、豊かな彩色を−同人誌「丹青」創刊 |
「丹青」という字も意味も美しい言葉の雑誌が、刊行された。「丹青」とは寺院などにも塗られている彩色画などのこと。定年後の人生の第2ステージに豊かな色を塗ろうとする老学者たちの気概を込めた「同人誌」である。 世話人は金属工学が専攻の康忠煕さん(70)。朝鮮大学の理学部・工学部教授を務め、数年前に定年を迎えた。 「2年前から2カ月に1回集まって、勉強会を開いてきたのが、こういう形で結実したのは、嬉しい。12人のメンバーが好きなテーマで報告をし、みんなが喧々囂々と語り合ってきた。喋りっ放しじゃもったいないということで、本作りにも挑戦した」 平均年齢は70歳ちょっと。第一線をリタイアしたメンバーたちの知識欲は衰え知らず。出稿はすべて各自がパソコンで打ち込み、フロッピーで。編集を担当した成耆珍さんはパソコンやスキャナーも購入し、自前で本作りに初挑戦した。 康さんは「金をかけずに文集作りをしようというのが、我々の合い言葉。勉強会も自治体の会館を利用し、編集会議も喫茶店で開いた。勉強会に3時間程熱中した後は、駅前の居酒屋で一杯。これがまた、いいんだ」と楽しそうに話した。 こうしてできあがった「丹青」の創刊号。「イスラム原理主義の思想と運動」「9.11事件は反テロ戦争政策の産物」「日本の歴史教科書問題を考える」「日本国誕生と渡来人」「崔漢綺が読んだ西洋医学」などの力作が並ぶ。 勉強会の傍ら、山歩きや碁会も楽しむ。しかし、康さんはしみじみ語る。「勉強会はみんなが皆勤賞なんだ。山歩きなどはちょっと都合が合わなくて、みんなが揃わない時もあるけど…。学ぶということは何歳になっても人に幸せをもたらしてくれる」。 創刊号は、300部刷って、各自の負担は2万円程(一杯用の費用も含む)。「できることはすべて自前で」の精神で作りあげた本。 「勉強は楽しく、かつ持続的に」というはつらつとした老学者たちの思いが、行間から立ち上ぼってくる。(公) [朝鮮新報 2003.4.23] |