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〈みんなの健康Q&A〉 脳卒中(下)−検査方法

 Q:どのような検査で脳血管障害が発見されるのですか?

 A:CT(コンピューター断層撮影)〜レントゲンで使うX線を利用して身体の輪切りの形を写真にする検査です。外からは見えない脳の中の様子がわかります。

図1 図2 図3 図4 図5

 図1のCT写真は、脳梗塞の症例です。突然の左半身麻痺にて発症しました。CTで黒いところが全部脳梗塞の病変です。図2は、脳出血の症例。軽い左半身麻痺で発症しましたが、自宅で様子をみていたところ、急激に意識障害が進行し救急搬送されました。CTでは白いところが出血を生じた部分です。図3は、くも膜下出血のCT写真。白いところが出血しているところです。激しい頭痛で発症し、間もなく意識を失い搬送されました。緊急手術にて一命を取り留めております。

 MRI〜強力な磁石を利用してCTと同じように身体の断面の形を写真にします。CTと違って輪切りだけでなく、縦切り、横切り、斜め切りなど、どのような方向の断面の写真も簡単に撮ることができます。CTよりも脳の状態が詳しくわかります。時にCTではわからないような脳梗塞もありますが、このような場合でもMRIでわかることがあります。

 図4のMRIではCTでは検出できない小さな病気も発見されます。白い粒状の脳梗塞がMRIでみつかりました。脳ドックで症状のない小さな脳梗塞が発見される機会が増えております。

 MRA〜MRIと同じ装置で行う検査です。MRIは身体の断面を写真にしますが、MRAは血管の形そのものを写真にします。前後、左右、上下、斜めなど、任意の角度から見た血管の形を知ることができます。

 脳血管カテーテル検査〜腕や大腿の血管からカテーテルという細い管を入れ、最終的に脳へいく血管の中にカテーテルの先を送り込みます。この状態でカテーテルを通じて血管の中に造影剤という薬を注入してX線を利用して血管を撮影する検査です。

 脳内の主な血管の様子などは造影剤を使ったCTやMRAでわかるのですが、実際に血液が流れている様子や細い血管の状態、静脈などは脳血管撮影を行わないとわからないこともあります。図5の患者さんは、左半身麻痺の状態。脳の太い血管一本が完全に詰まってしまっている様子がこの検査で判明しました。

 Q:脳梗塞の治療は?

 A:残念ながら脳梗塞が完成してしまうとその部分の脳はもとには戻りません。しかし、脳梗塞が完成してしまう前に血流が再開通したり、血管が詰まったままでも周りから血流が補われると完全な脳梗塞にはならずに済んだり、脳梗塞になっても最小限の障害で済んだりします。そのため、麻痺などの神経症状が出てから間もない時は血栓(血液の塊)を溶かす薬を使ったり、微少な血液の循環を改善させる薬をつかったり、血栓を出来にくくする薬を使ったりします。このような治療を内科的治療と呼んでいます。多くの場合、内科的治療だけでもかなりの治療効果が期待できます。

 Q:手術はしないの?

 A:時々「手術で脳梗塞が治らないか?」と相談されることがありますが、先に述べた通り完成してしまった脳梗塞はどのような治療をしても元通りにはなりません。しかし、血流が不足しているだけでまだ完全な脳梗塞になっていないような場合は、血流が増えるような手術で脳梗塞を防げることがあります。

 また、発症して間も無いときには先に述べたカテーテルを使って詰まった血管の血流を再開通させることで、症状を改善させることができる場合があります。脳血流を改善させる手術の代表的なものは、頚部の頚動脈に対する血栓内膜剥離術とバイパス手術でしょう。これらの外科手術は主として将来の脳梗塞の発症や悪化を防ぐ目的で行われることが多く、病状が比較的落ち着いている時に行われることがほとんどです。

 Q:脳卒中の予防は?

 A:高血圧、心臓病、高脂血症、糖尿病などがある人はそれらの治療が大切です。食生活、喫煙、嗜好品、運動などの生活習慣なども見直してみてはいかがでしょうか。脳ドックなどを受けてみるのも悪いことではないと思います。(奈良県立医科大学脳神経外科、朴永銖医師、奈良県橿原市四条町840 TEL 0744・22・3051)

[朝鮮新報 2003.5.8]