肥満に注意!〈下〉 |
李幸子さん(仮名、58)は「子供を産むたび3キロずつ体重が増え、子育てから解放されると、さらに5キロ太ったしまった」と話す。 血圧が高く、医師には適度な運動を勧められているが、「働いているので食べなくてはという意思が働き、ウォーキングをしなくてはと思いつつも、疲れるからと怠ってしまう」。 また、金勇治さん(仮名、63)は、運動不足解消のためジョギングと週末の登山を心がけているが、「酒とその後のラーメンがやめられない」。仕事のため夜遅く帰宅しても、必ずご飯を食べてしまう。 BMI25以上を肥満とする定義に従い、2000年の肥満者の頻度を見ると、男性は20歳代では約19%、30歳代では約27%、40歳代では約29%、50歳代では約30%、60歳代では約31%、70歳代では約22%であるのに対し、女性は20歳代では約7%と低く、30歳代でも約13%、40歳代で約20%、50歳代で約24%、60歳代では約31%、70歳代では約27%と40歳代以降急激に増加していることがわかる。生活習慣病の好発年齢である40〜50歳代は、男女とも3人に1人が肥満になっていると考えられる。 便利さと運動不足 東京・順天堂大学医学部の崔正福医師は「肥満の原因は過食、食べ方の誤り、遺伝、運動不足、熱産生障害などがあげられるが、その2大原因は、過食と運動不足である」と指摘する。 厚生労働省発表の「国民栄養の現状」によると、日本においての成人の1日当たりの平均摂取カロリーは、2000キロカロリー。これは、過去45年間ほとんど変化していないが、肥満は3〜5倍増えている。これは明らかに運動不足が原因のひとつとして考えられる。工場のオートメーション化による肉体労働の減少、家庭での電化製品の普及による活動の低下、自動車の普及、室内でのエスカレーター、エレベーターの普及、交通手段の進歩による活動の低下など、エネルギー消費が減ってきているのだ。また、食生活の欧米化により、脂質の摂取量が増えていることも肥満の増加につながっている。 崔医師は「過食をしなくても、食べ方を誤ると太る。脂肪の取り過ぎのほかに、夜の過食、絶食期間の長いドカ食い、まとめ食い、朝食抜きというような不規則な食べ方は、太りやすい食べ方である」と指摘する。どこにでもコンビニエンスストアがあり、テレビの視聴やゲームに興じながらのながら食い、受験生の夜の過食や、朝食を抜くような生活スタイルは要注意というわけだ。特に、首都圏では、通勤圏が遠くになり夜遅くに帰宅して食事をし、すぐに寝るという、夜食型の食事形態が存在する。このような食べ方の誤りも肥満の増加につながっている。 肥満克服のてびき 「1日の摂取総エネルギー量を減らせば、体重は確実に減る」と崔医師は話す。現に、糖尿病患者の場合、「標準体重×25〜30=1日の摂取キロカロリー」と指示している。ここでいう「25〜30」という数字は、1日の生活活動度を示すもの。寝たきりや運動量の少ない人は「25」、肉体労働など消費エネルギーの多い人は「30」となる。 また、運動はできるときだけただたくさんすれば良いというのでなく、「まずは1日20〜30分の散歩を、1日に1〜2回してみること」が大切。運動療法としての効果を望むなら、せめて2日に1回ずつは行った方が良いと、崔医師はいう。 朝食抜きのダイエットについては「同じ食事量を1日2回に分けて食べるより、3回に分けて食べた方が太りにくい」と話す。また、糖質の吸収をやわらげるため、食事の際に野菜など繊維物質を先にとるのも効果的。将来的には、この先10年後、日本における肥満者の数は現在の5人に1人から4人に1人に増えることが予測される。「健康寿命」を延ばすため、生活習慣病の最大の原因である肥満を減らす必要がある。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.5.24] |