「差別に反対した信念の生涯」−記録映画「住井すゑ 百歳の人間宣言」東京で6月14日上映会 |
大河小説「橋のない川」で知られる作家、住井すゑさん(1902〜97)を描いた記録映画「住井すゑ 百歳の人間宣言」(文エンタープライズ製作、1時間26分)の上映会が各地で行われている。この映画は住井さんの幼少期から晩年までの足跡をたどり、「橋のない川」を書いた背景を描いている。同作品は「第57回毎日映画コンクール」で記録文化映画賞(長編)を受賞した。 「橋のない川」は、1959年に第1部が雑誌「部落」に連載されスタートした。7部の完成までに33年の時が流れている。 住井さんに11年前、92歳の時、話を聞いたことがある。その時、住井さんは「19年前に第6部を刊行したので、これで終わろうと思っていた。また書こうと思ったきっかけは、昭和天皇の死だった。代替りのセレモニーが華やかに行われたが、天皇という人間以上の存在を作るということは、人間以下の存在を作ることにつながる。これが社会に残るあらゆる差別の根源だということを書き続けねばと思っている」と語っていた。 子供の頃から差別に敏感だった。1909年、朝鮮侵略の首謀者の一人、伊藤博文がハルピン駅頭で安重根に射殺された。「この時、小学2年生だった。国葬があって校長が、安重根を口を極めて罵った。ピーンとおかしさに気づいたよ。校長はうそつきだと。祖国を奪う者に対して、怒り心頭に発してのその行為は、朝鮮人として当然ではないかと。英雄だと思った」。 翌年に「大逆事件」が起きた。反戦と社会主義を主張した幸徳秋水は死刑に。「人間は平等だと主張して殺されるなんて、許せないと思った。このとき安重根と幸徳秋水のかたきは、私が一生かけて討ってやると心に誓ったのです」 力強い覇気のある言葉が今でも耳に残る。 東京での上映会 [朝鮮新報 2003.6.2] |