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高麗人参余話(6)−「陰」と「陽」の宇宙観

 西洋医学は病気を診断して病名を決めるが、漢方医学では病人を診て「証」を決める。漢方では「証」というものをものさしとしていて、患者の症状や体質、体格、体力などから総合的に判断し、「証」にあった薬を処方する。「証」とは、患者の自覚症状、ライフスタイル、体質、食べ物の好み、男女の別、年齢、性格などのさまざまな情報を集約して導き出された、漢方的な診断である。この「証」を決めるためのものさしになるのが、陰陽、虚実、寒熱、表裏などの概念である。

 昔の人は宇宙全体が「陰」と「陽」で構成され、その均衡が宇宙の秩序を決定すると考えた。

 「陰」は水に代表される静かなほう、「陽」は火に代表される活発なほうを指す。お互いに相反する2つの概念は補完しながら、バランスをとっている。

 陰陽の考え方は漢方医学の根底にあり、西洋医学にはない利点を生み出している。活動を「陽」、休息を「陰」として、こういう考えを体の部位や働きに当てはめることができる。上部は陽で、お腹は陰、手足は陽で躯体は陰、男は陽で女は陰になる。陽が盛んで陰が不足すると陽が静まらず体が火照ったり、眠れなくなったりする。かっとして怒り易くいらいらして落ち着かない感じになる。水の性質が不足するから便秘になったり、のどが渇いたり、のぼせたりする。一方、陰が盛んになると、昼間でも眠かったり、力が出なかったりする。水の要素が多いので寒がりだったり下痢気味だったりする。

 こうした陽の盛んな状態を「陽証」、「実証」、陰の盛んな状態を「陰証」、「虚証」と呼ぶ。

 李朝後期の医学者李済馬(1837―1900)は患者の体質と性格により、同じ病気でも症状は異なり、薬物に対する反応も違う事から患者を一律に見るのではなく、人それぞれの体質、内臓の状態、精神状態、性格、食性などによりそれぞれ違う治療法が必要だと説いた。このような臨床経験に基づき、人の体質を「太陽人型」、「少陽人型」、「太陰人型」、「少陰人型」の4つの型に分け、新しい臨床体系を打ち出し薬物治療と予防法を適用する独特な「四象医学」説を提唱した。四象医学では肉体的体質論と精神的気質論を両立させた総合的学理体系を切り拓いた。人蔘を服用するとき、例えば体質が「少陰人型」の場合、効果が大きいという。少陰人は、先天的に腎機能は旺盛だが消化機能が弱く虚冷になり易い人である。(洪南基、神奈川大学理学部非常勤講師)

[朝鮮新報 2003.6.13]