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詩−封印するな あの日々を

 遠ざかってしまった故郷よ 兎と狐に凝せられ 追われ 捕獲され
 遂に 異郷の地で 虜因の身
 飢えのなかで 無体なムチが 飛び交い
 血と 汗が したたって地を染める

 隣国の 歴史豊かな人々を過酷に封印し
 理不尽にも この国の
鉱山の増産に連行
 傷つこうが 病もうが
働くのを強要

 いつの日か 帰りなんと思う祖国も闇の奥
 次第に燃えたぎっていく抵抗の火を
 心のうちに 収めたまま沈黙し
 たがいに 誓ったのも
束の間
 死んでいく仲間に 捧げる言葉は一つ
 さようなら きっと果たそう 戦いの終りを

 かつて そんな日が
 平気で繰り返されていたのを
 きみは あなたは 知っているか
 いま 鉱山跡地を 観光バスが行く
 どこをむいても 栄光を綴った懐旧の姿
 終掘の 証しは 黄金でかたどられ
 そこに 戦時下の模様は風化し
 謝罪もなく 過去に閉塞されていく一方だ

 全土に散らばったままの無名の遺骨
 土葬であれ 火葬であれ とどめようもなく 無縁の仏よりも無残
 イタドリの葉が風となり 精霊を呼んだか
 不意に辺りが共鳴し 泣きはじめるのを きみや
あなたに 聞こえるか

 真実を辿れば 明かされると信じよう
 無理やり連れて来られたところであっても
 決して尊厳を失うことのなかった存在を
 忘却するな 伝承し 記憶せよ
 残されたものの 責任を果たすまで

(磐城葦彦、秋田県小坂鉱山労組元委員長=秋田県朝鮮人強制連行真相調査団会報6月10日号より)

[朝鮮新報 2003.7.7]