夏休みにこの一冊を |
暑さでうんざりするような夏がきた。海へ、山へとレジャーも良いが、ときには涼しい木陰や冷房の効いた部屋の中で本と向き合うのも悪くない。 とかく「朝鮮モノ」が取り上げられるようになった今日この頃。夏休みに読んでみたい朝鮮と在日朝鮮人問題に関する書籍をセレクトしてみた。 尹健次著「きみたちと朝鮮」(岩波ジュニア新書)は若者におすすめの朝鮮関連入門書籍。日本と朝鮮の長い交流の歴史を紐解きながら、日本の朝鮮侵略と弾圧、強制連行、「従軍慰安婦」、分断国家の成立、民族統一への展望ほか、在日朝鮮人問題についてもふれている。 また、今年80年を迎える関東大震災を振り返る意味で「写真報告―関東大震災 朝鮮人虐殺」(「昭著、影書房)を開くのも意義深い。1923年9月1日、突然、関東地方を襲ったマグニチュード7.9の激震は死者91344人、家屋全壊焼失46909戸という大災害をもたらした。この渦中で「不逞鮮人が来襲して、井戸へ投毒、放火、強盗、強姦」をしているという流言が飛びかい、6000人とも1万人ともいわれる朝鮮人が虐殺された。著者は、理性を失っていた日本の民衆がいともたやすくこの流言を信じたことを指摘し、「発達した情報社会での流言蜚語は、関東大震災どころではなくはるかに大きい、予想を超えた悲劇を生み出さないとも限らない」と憂慮している。 日本のメディアによる北朝鮮バッシングに警鐘を鳴らすものとして出版されたのが「北朝鮮本をどう読むか」(和田春樹・高崎宗司編著、明石書店)。90年代以降、刊行された500冊を超える北朝鮮関連書籍を分析しながら、マスコミの「北朝鮮叩き」の本質を丁寧に解きほぐしている。 また、本紙に約2年に渡り掲載してきたインタビューをまとめた「生きて、愛して、闘って」(朴日粉編著、朝鮮青年社)は、無名の在日朝鮮人女性の目から見たひとつの在日朝鮮人史になっている。祖国を奪われ、絶望的な運命に翻弄されながら、屈せず力強く生きた女性たちの物語。ときに悩みや苦しみに直面する青春時代を生きる若い世代に読んで欲しい1冊。 「私の歩んだ道−在日、女性、ハンセン病−」(李乙順著、「私の歩んだ道」を刊行する会)は、不治の病とされていたハンセン病にかかった李乙順さんの自伝。どんなに悲惨な中にあっても人間としての誇りと希望を抱き、苦しみを乗り越えた勇気と強さに学びたい。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.7.16] |