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高麗人参余話(9)−上薬最高の「生薬中の生薬」

福島県会津若松の人参栽培の風景

 新薬を創るとき、その病気に対する有効性を判定する以上に副作用がないということが大事である。従って、新薬の研究開発では副作用が起きないことを証明するのに大半の時間を費やしている。ねずみやサル、犬などの動物実験の結果や健康人に与える影響を見てから、少数、さらに多数の患者に投与した臨床結果に基づいて新薬にできるかどうかを慎重に検討する。また、市販された薬についても副作用が起きていないか常に監視している。

 漢方薬は数千年に亘って臨床に使われてきたので、その薬について使っていい場合と悪い場合についての豊富な経験と知識が蓄えられている。もちろん漢方薬も薬だから使い方を間違えると副作用が出る場合もある。副作用というのは、治療目的以外の作用が体に悪さをするという意味だが、漢方薬の場合、服用をやめれば元に戻るのが普通で、西洋薬のように効いている薬を続けているうちに肝臓が悪くなったり、腎臓に障害が出るような、後まで残るような影響を残す事はまずない。

 「神農本草經集注」(陶弘景編、5〜6世紀)には365の生薬が収録されているが、それぞれ効能を中心に上品、中品、下品の3等級に分類している。即ち、上薬(人蔘、朱砂、甘草、地黄、柴胡、桂皮、竜骨、麝香、牛黄等)は「寿命を延ばし、まったく毒がなく、長く、また多く服用しても人体に害を及ぼさない不老長寿の薬」であり、中薬(石膏、生姜、葛根、当帰、麻黄、芍薬等)は「体力を補い、毒の有無をよくわきまえ、適宜配合して用いる薬」であり、下薬(附子、大黄、桔梗、桃仁、安仁等)は「病人が病を治すのを主とし、毒性も強いので長期服用は慎む薬」を指している。人蔘が上薬の最初に挙げられていることからも「生薬中の生薬」と言われることがうなずける。人蔘を今で言う保健薬、健康食品の範疇に入れられるのも上薬の考え方からして自然である。(洪南基、神奈川大学理学部非常勤講師)

[朝鮮新報 2003.7.25]