演劇「プラットホーム光の夏」、東京で上演へ |
ピープルシアター第38回公演「プラットホーム光の夏」が10月29日から11月2日まで東京池袋の東京芸術劇場で上演される。 この公演は演出家の森井睦さんの書き下ろしによるもの。1945年2月、福岡刑務所で獄死した詩人尹東柱と、新大久保駅のプラットホームから落ちた人を救おうとした「韓国」の青年の無残な死を重ね合わせながら、戦前、戦後の日本と朝鮮の民衆の思いを炙り出している。 公演を前にして都内の稽古場を尋ねると、役者たちが朝鮮語の入り交じったセリフと懸命に格闘していた。 森井さんは「今の日本の現状は段々、戦前に近づいていくようで、油断がならない気がする。長い間、日本国家の手によって抹殺された朝鮮の抵抗詩人尹東柱のことを描きたいと念じてきた。今の時代だからこそ彼の思いを、特に日朝の若者に知ってほしい」と語った。 尹東柱役の二宮聡さん(36)は「彼は理想を高く持って、その信念を曲げずに貫いたイエスのような人で、尊敬する。母国語を大切にし、日本によって滅ぼされようとした民族の文化を命がけで守ろうとしたことで死に至った。死をも恐れぬ真の強さと優しさに強く引かれる。その一方で、自分の身に引き寄せて考えた時に、自分はこんな行動がとれるだろうかと…。尹東柱の存在と生き方を知り、幸せに思う」と目を輝かす。 朝鮮の母を演じるのは河東けいさん。普段は大阪が活躍の舞台。生野などの在日1世のハルモニたちと親交を結ぶ、笑顔が美しい女性だ。 「1世の女性たちは人間的に『高度』な方たちだと思う。苦難を経て、人への無限な優しさと豊かな知恵と経験をお持ちです。彼女たちとお話ししているとこちらの心まで癒される。非常に重要な役を演じることになったが、ヒトラーのような自民族優越主義でアジアや朝鮮を支配しようとして、結局滅びた日本の歴史を再び繰り返してはならないとの思いを強くしている」と河東さん。 また、公演のパンフレットには詩人の石川逸子さんが「隣国を暴力によって支配し、その文化を踏みにじり故なく差別してはばからない日本であった。…その詩人の肉体のみならず詩稿まで抹殺しようとした日本の罪は重い」との一文を寄せている。 また、大村益夫早稲田大学教授も同パンフで「平和なよき時代に出会ったならば、こころやさしい童詩人として生涯を送ることができたかもしれない。しかし、彼は民族の危機に遭遇したために、童謡童詩の世界に留まっていられなかったのだ」と述べている。(朴日粉記者) 上演日時 10月29日(水)〜11月2日(日)、時間は29日〜1日までは午後7時開演。(2日は午後2時開演)。東京芸術劇場小ホール(JR、地下鉄池袋駅西口前)。前売券=3800円、当日券=4000円、問い合わせはピープルシアター TEL 042・371・4992、チケットぴあでも購入可。 [朝鮮新報 2003.10.22] |