第3回「李玉禮と仲間たち−創作人形とポジャギ展」開く |
「李玉禮と仲間たち―創作人形とポジャギ展」(主催、朝鮮半島伝統文化研究会)が10月17〜19日、神戸市立王子市民ギャラリーで開かれた。昨年の京都、東京での開催に続き3回目となる。 今回の特長は、在日同胞だけでなく、日本人による作品も数多く出品されたこと。170点あまりのポジャギ作品と李玉禮さん(76)の手による62点の創作人形が展示され、ひときわ華やいだ雰囲気が会場に広がった。3日間の開催期間中、730人の同胞、日本人が訪れた。また最終日には、西播地域の若いオモニたちのコーラスサークル「ソファミ」によるアカペラコーラスと創作仮面舞踊の公演も開かれた。 李さんは現在、兵庫県の5つの同胞女性たちによるポジャギサークルで指導しながら、大阪府、京都府のNHK文化センターでそれぞれ講師をつとめ、多くの同胞、日本人にポジャギ作りを教えている。今回、展示された作品の多くも李さんの生徒さんたちが作ったものだ。 李さんは指導する時に、ただ技術だけを教えるのではなく、李さん自身が幼い頃にオモニから聞いた話や、故郷での思い出、朝鮮と日本との関係などについてさまざまに話をしながら進めていくのだという。 「針に糸を通すでしょ。その糸が長いと私のオモニは、『糸が長いと遠いところに嫁ぐようになる』と言っていたの。そういう話をしてあげると、みんな喜ぶの」 李さんのそんな話を楽しみに、教室に通う人も多いという。生活に密着した話から入ると、日本の人たちも「日本がむかし朝鮮に何をしたのかということをよく理解するようになる」という。朝鮮蔑視の風潮が吹き荒れる今の日本社会のなかでも、ポジャギという朝鮮の伝統文化に触れ、朝鮮に対する理解を深めていく日本人も多い。 京都のNHK文化センターで4月から学んでいるという野路井君代さん(66)は、「娘に勧められて始めました。難しいけれど、ポジャギは本当にすばらしい朝鮮の文化ですね。布自体が持つみずみずしさが感じられるし、ステンドグラスみたいに奇麗」と語る。また、「手作業の精密さに目を奪われ人形の素朴な表情に言葉を失いました。歴史に残る文化を受け継ぐことの大切さ、それに力を注ぐ人たちにお会いしたい気持になった。また朝鮮半島の文化に触れたいと思う」(古川陽子、尼崎市在住)など、朝鮮文化に触れた感動を会場に訪れた多くの日本人がつづっている。 李さんの片腕として教室に同行しポジャギ作りを教えている金貞美さん(36)は、「ポジャギに朝鮮女性の美的感覚、生活感情を強く感じてとりこになった。ポジャギは芸術作品としてあるのではなく、実生活に使うためのもの。布の切端を縫い合わせて作るので美しいなかにも合理性があり、民族の英知が込められている。力づよく生きてきた1世のオモニたちを象徴するかのよう。同胞にも日本人にもそういう部分を感じ取ってほしい」と強調する。 李さんが創作した人形は、「機織」「農楽」「民俗遊戯」などどれも李さん自身が18歳まで故郷で暮らし、身体の奥深くに染み込んだ生活の断片をそのまま表現したものだ。繊細で気品がある人形の一つひとつには、ただ故郷を懐かしむ気持が込められているのではない。「国を奪われた生活はどんなに惨めだったか。それは体験した者にしかわからない」という李さん。日本に渡ってきた後も愛国事業にすべてを捧げてきた。そんな李さんの1世としての生活すべてが凝縮されているかのようだ。 李さんは、針を動かすごとに、民族の心を若い世代に伝えたいという思いを込めるのだという。「衣」を通しての民族の伝承。李さんの実践は、世代や民族の壁を超えて確実に実を結んでいる。(琴基徹記者) [朝鮮新報 2003.11.5] |