〈アイ【ai】ミュージカル「ミレ」〉 来月、大阪同胞らが初上演 |
民族教育の原点を知り守り抜いて行こう―大阪府下の同胞、朝鮮学校生徒たちが出演するアイ【ai】ミュージカル「ミレ」(主催=同公演実行委員会、後援=大阪府、大阪市、府・市教育委員会)が12月4、5の両日、森ノ宮ピロティホール大ホールで上演される。一般の同胞、生徒たちが出演するオリジナルのミュージカルは、在日同胞社会では初めての試みだ。総勢82人の出演者らは、公演の成功に向け連日、猛稽古に励んでいる。 「子ども」「愛」「私」 アイ【ai】ミュージカル「ミレ」(金智石文芸同大阪支部演劇口演部長、プルナ2000代表の作、演出)。【ai】には朝鮮語の아이=「子ども」、日本語の「愛」、そして英語のI=「私」の3つの意味がある。すなわち、子どもたちは愛であり、私たち自身である、ということだ。そして、朝鮮語で未来の「ミレ」には、明るい未来という意味がこめられている。 作品の時代背景は、祖国が解放(1945年8月15日)された直後の混乱期。異国の地で祖国解放を迎えた1世同胞たちが民族自主意識を持ち、同胞子女たちを新しい祖国の建設に貢献できる人材に育てるため、ウリハッキョを建てて守ってきた熱い思い、そしてウリマルと民族の歴史、文化を学び、誇りある民族の一員としてたくましく成長していく子どもたちの姿を通じて、半世紀にわたり受け継がれてきた民族教育の原点を振り返り、今後のあり方をともに考えていくことを見る人々に訴える。 代を継ぎ守る
今回、オリジナルミュージカルの上演にあたり8月、一般の部と生徒の部に分かれ歌唱力、演技力、ダンスの3部門で、出演者82人を選抜するための厳正な審査が行われた。 応募した府下の朝鮮学校生徒100人の中から見事主役の座を射止めたのは、東大阪初級4年の高秀花さん。8歳の少女「金未来」を演じる。「オーディションの時はドキドキした。毎日が大変だけど一生懸命『未来』を演じたい」。 朝連支部長の役を演じる崔太成さん(57、朝鮮市場分会副分会長)は、「オペラの経験はあるが、ミュージカルは初めて」。「今、同胞社会を取り巻く情勢は厳しいが、ミュージカルを見た人たちが力と勇気を持てるようがんばりたい」。 また、元独立運動家で朝鮮学校の教師役を演じる金優子さん(20、朝青生野南支部同盟員)は、「不幸な歴史が繰り返されないためにも多くの日本の人々に見てもらい、共に差別のない社会を築いていく思いを伝えたい」と語る。李康熙さん(38、東大阪南青商会員)も、「ウリハッキョの重要性を訴え、われわれ若い世代が代を次いで民族教育を守っていかねばならないということを強くアピールしたい」と意気込みを語った。 今年の運動の集大成
今公演を企画した総聯大阪府本部常任委員会は、01年の第19回定期大会で「民族教育、同胞生活権利、新しい世代」重視を柱にした運動を府下同胞たちに呼びかけた。また今年度の事業計画の中で、民族教育発展の重要な事業として民族教育をテーマにした文化行事を行うことを提起。その一環として7月にミュージカル開催を決定、8月に実行委員会を正式発足させた。 一方、大阪では今年1年、民族教育と民族性を固守、発展させていくためのさまざまな取り組みが行なわれてきた。3月には、朝鮮学校排除を企図した国立大受験資格問題に関する文科省の決定に反対、付与を求める全同胞的な署名運動を展開し、20万人に及ぶ署名を国などに提出した。 6月には、6.15共同宣言3周年を記念し、01年に続き総聯と民団の合同行事「大阪ハナマトゥリ」を開催。参加した約3万人の同胞と日本市民に、民族和合と地域交流をアピールした。9月にも、文芸同口演部と音楽部のジョイントイベントを開催。今月末には文芸同舞踊部の「芸術の夕べ」が催される予定。 今回のミュージカル上演は、民族教育の発展と権利擁護を掲げた、今年の大阪同胞運動の集大成だといえる。(千貴裕記者) [朝鮮新報 2003.11.25] |