〈みんなの健康Q&A〉 目の病気−飛蚊症 |
Q:黒いものが飛んでるように見えるのですが? A:目の前に「黒いものが飛ぶ」ことを眼科では飛蚊症といいます。蚊が飛んでいるように見えるという意味ですが、このほかに糸くず、黒いスス、水玉、輪などさまざまな形が見えることがあります。また黒や透明など色もさまざまで、数も1個や数個、時には多数のこともあります。これらの飛蚊症は眼球の硝子体に濁りができたために起こる症状です。 Q:なぜそのように見えるのですか? A:人間がものを見るとき、外界から入ってきた光の刺激が透明な角膜、前房、硝子体を通過して神経の膜である網膜に到達することによりものを見ることができます。光が通過する角膜、前房、硝子体は正常ではすべて透明でなければなりません。この時、透明であるべき硝子体に何らかの原因で濁りができますと、その影が網膜に映り、目の前の浮遊物として見えるようになります。これが飛蚊症です。濁りは実際に目の中にありますから、目を動かすと一緒に動きますし、また網膜に近い部位にある濁りほどよりはっきり見え、濁りの大きさや量によって見えるものの形や大きさが異なるわけです。 Q:硝子体の濁りの原因について教えてください。 A:濁りの原因は大きく分けて4つあります。 @加齢による変化〜硝子体は水晶体(目のレンズ)の後方から網膜に達するまでの眼球の大部分を占めており、その中には「生卵の白身」のような透明でドロッとした物質がつまっています。40代以降になりますと硝子体の組織が徐々に変化することにより、ドロッとした硝子体は液状に変化することになります。また同じ頃、硝子体は網膜と接着していた弱い部分から少しずつはがれ始めるという変化が起きてきます。このことを後部硝子体剥離といいます。以上、硝子体の液化、網膜からの剥離に伴い色々な形の濁りを生じることになります。この変化自体は年齢の変化に伴うものですから異常ではないので、後で延べる網膜剥離(網膜裂孔)を伴うものでなければ何も心配することはありません。飛蚊症の大部分の原因はこの加齢に伴う硝子体の変化による濁りなのです。 A網膜裂孔(網膜剥離)〜この病気は神経の膜である網膜に穴が開くことにより網膜がはがれ、視力を失う非常に怖い病気の1つです。網膜に亀裂が入るとき、血管を巻き込むことにより出た出血(血のり)や、はがれた網膜の部分から色素上皮という細胞が硝子体に舞うことなどが硝子体の濁りの原因となります。網膜剥離の原因としては外傷によるものがよく知られていますが、後部硝子体剥離を起こすときに弱くなっている網膜の部分が引きちぎれて網膜裂孔を起こすことが多々あります。ですから加齢の変化によるものがほとんどだと安心せずに、必ず詳しい眼底検査は必要になるわけです。 B硝子体出血〜本来、硝子体には血栓は存在しないため出血は起こりませんが、網膜上で起きた出血が何らかの原因で硝子体側に出た場合、硝子体に出血が出ることになります。硝子体出血の原因としては糖尿病によるものや、高血圧や高脂血症による静脈血栓症、その他眼底出血の悪化によるものなどがあげられます。出血が少量であれば飛蚊症の原因になりますが、出た出血量が多いと重度の視力低下を引き起こすことになります。いずれにしても大きな視力障害につながる病気ですので、ことは慎重に運ばなければいけないと思います。また以前に眼底出血を起こしたことのある人が、しばらく経過した後に飛蚊症を自覚した場合、硝子体出血や網膜裂孔などが考えられるため、早めの検査が必要だと思います。 Cその他炎症疾患によるもの〜糖尿病や膠原病などによく起こるぶどう膜炎など、眼球に炎症が起きると硝子体の中に炎症による濁りが出現し、飛蚊症の原因となります。炎症を起こしますと飛蚊症の自覚だけではなく「かすみ」、視力低下などの症状を伴うことが多いようです。 Q:注意する点は? A:飛蚊症の多くは加齢による変化で治療対象になりませんが、大きな病気の前兆であったり、重症な病気につながるサインだったりすることから、長く放置することなく、すみやかに眼科専門医を受診し、検査することをお勧めいたします。特に網膜剥離の治療は入院、手術治療が主ですが、早い段階で発見(網膜裂孔ができた段階、またはできる前の段階)できると、外来でのレーザー治療のみで治癒することも可能ですので、飛蚊症を自覚したら早めの検査をお勧めします。(ごん眼科権昭致院長、青森市千刈2−1−35、TEL 017・766・8877) [朝鮮新報 2003.12.5] |