〈投稿〉 メダル以上に価値ある「統一行進」 |
青森冬季アジア大会に参加した朝鮮民主主義人民共和国の選手団が無事帰国の途についたので、共和国のアタッシェとして行動を共にした私は率直に言ってホッとした。 日本のメディアは、はるばる平壌から北京経由で来た選手たちを機内にまで執拗に追っかけ、成田到着後から帰国するまでその一挙手一投足に対し微に入り細に入り、あげ足を取るような映像を連日連夜テレビのワイドショーで流し、暗いイメージを作り出す事に専念した。 日本の識者も指摘しているように、初歩的なルールも無視した日本のメディアのあまりのお粗末さや、日本政府の朝鮮選手団への政治がらみの対応について今さら話す気にもなれないが、それにしてもスポーツ大会に参加しているのか、手を変え品を変えた嫌がらせをされるために参加したのか、疑いたくなるような異常な状況の中での2週間であった。 入国時の税関の厳しい検査から始まり「警備上の理由」とやらで外に出ることもできず、応援に来た同胞たちと会うこともままならない、これではまるで「犯罪人」扱いであった。 私はアトランタやシドニーでのオリンピックをはじめバンコク、釜山でのアジア大会、数々の国際選手権大会にも朝鮮選手団の役員として参加した経験があるが、いずれの場合も他国の選手団と同様、なんら差別、制約を受けることなく競技者として堂々と参加できたものだ。 朝鮮はアジアオリンピック委員会(OCA)加盟国であり、選手団は大会組織委員会の招待により日本で開催される冬季アジア大会に参加したのだから、日本政府は当然他の参加国と同様に対応しなくてはならないことぐらい知らないはずはあるまい。 わが選手団に対する報道のあり方や対応について関係当局に幾度も抗議したが、ついに最後まで是正されることはなかった。 それでもフィギュア、女子アイスホッケー、ショートトラックで朝鮮選手たちは精一杯の活躍を見せてくれた。 大会終了間際、女子ショートトラックで銀、銅のメダルを獲得したのは立派だった。同胞たちがわが選手たちに惜しみない拍手を送り涙したのもうなずける。 大会を通じて、人々をもっとも感動させたのはなんと言っても開・閉会式で北と南の選手団が朝鮮半島を描いた「統一旗」を掲げての同時入場行進であった。 シドニーオリンピック、釜山アジア大会に続く歴史的なこの統一行進が青森でも実現したのだ。 2000年のシドニーオリンピックで、北南チームが互いに手を取り合い史上初めて同時入場する行進に参加した私にとって「統一旗」への想いは格別に熱いものがある。 今や「統一旗」は、全民族の念願である祖国の自主的統一の誇らしくも輝かしい旗印となった。 いまブッシュ政権は力ずくで朝鮮を孤立させ、北と南の対決を煽ろうとしている。 しかし、6.15共同宣言が発表されて以来、さまざまな困難を克服し、北と南は一歩一歩着実に手を取り合って前進している。 金剛山観光開発、北と南の鉄道と道路の連結もそうであるが、とりわけ近年スポーツ交流が活発に行われているなかでの統一行進が、北南の朝鮮民族はもとより、世界の人々に与えた感動は大きい。 青森冬季アジア大会は、「民族は一つだ」と統一を願う全民族の力強いメッセージを再び世界に発信する場となった。(琴栄進、朝鮮オリンピック委員会常任理事・在日本朝鮮人体育連合会理事長) [朝鮮新報 2003.2.28] |