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山で元気!−中岳(熊本県、1506m)

 朝日登山クラブ2003年の初登山は、熊本県中岳(1506メートル)に決める。7人でパーティーを組み、早朝多久インターを出発。熊本県小国町を過ぎると牧草が果てしなく茂る大草原が広がり、はるか彼方には阿蘇5岳がそそり立つ。仲間たちは「ここは別世界だ」と絶句する。仙酔峡で背中にリュックを背負い歩き出すと、シンと静まり返った山間の谷間にはまだ少し雪が垣間見え、ロープウエー駅のスピーカーからの発車時刻を知らせる人の声がなんとなく物寂しく聞こえた。しかし、頭上を見上げると、赤ガレ谷を挟んで虎ヶ峰、鷲ヶ峰の荒々しい峰が、堂々とした姿でそびえ立ち、私たちに早く登ってこいと挑発しているように見え、仲間たちはすでにその挑発に応えるべく興奮していた。

 健脚の仲間は10分早く上のロープウエー駅に到着し私を待っていた。

 前日飲んだ焼酎がまだ体に残っているのか足が少しばかり重かった。中岳火口付近に着くと、阿蘇山の火口がほんの先に見え、恐々としながら狭い道を進むと火山独特のイオウのにおいが鼻をつく。それから40分のち中岳の頂上に立った。頂上は霧が出ていて先の見えない状態だったので、とりあえず私たちは記念写真を撮り、早々と下山することにした。上のロープウエー駅の待合室まで下り、手作り弁当を広げ話に花が咲いた。私は登山のとき上がりは遅いが下りは早い。それは私が胴長短足だからじゃないかという仮説を話すと、一同大爆笑した。

 死ぬ日まで空を仰ぎ/一点の恥辱なきことを、/葉あいにそよぐ風にも/わたしは心痛んだ。/星をうたう心で/生きとし生けるものをいとおしまねば/そしてわたしに与えられた道を/歩み行かねば。/今宵も星が風に吹き晒される。(1941年、尹東柱)

 登山する人は登山を人生に例えるが、私の登山はこの尹東柱の「序詩」がぴったりくる。自然の恵みにすっかり浄化された心と体。阿蘇山の煙をバックに登山の醍醐味をかみしめながらゆっくりと下山した。(2月24日、朝日登山クラブ、沈成達)

 【コースとタイム】仙酔峡下ロープウエー駅〜上ロープウエー駅〜中岳火口〜中岳、4.3キロ、2時間

[朝鮮新報 2003.3.14]