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山で元気!−高岳(熊本県、1592m)

 天気予報では降水確率50%。しかし、朝目を覚ますと心配とは裏腹に天気は良かった。山の仲間が家の前に集まりマイクロバスに乗り込むと、熊本県高岳に向かって出発。バスは大分県の九州横断道路の高原を走り抜ける。

 新緑、湯けむり、ミヤマキリシマと続き、カッコウや鳥のさえずりが山々に響きわたる。私はふと過ぎ去った青春の帰らざる初恋を思い出し、ひとりロマンチックな気分に浸った。仲間は下界で起きている騒々しい出来事を忘れ、生きる喜びを感じ、自然の恵みに酔いしれた。

 熊本県阿蘇国立公園に入ると果てしなく広がる大草原に赤牛がのんびりと草を食べているのが見えた。そうするうちに登山口の仙酔峡に着いた。冬山とはまったく様子が違って谷間のロープウェイ駅は高校の修学旅行生だろうか、数百人の若人たちで活気にあふれていた。今日の登山は、初心者に合わせてロープウェイで火口口まで行く予定が、強風のため運転中止になっていたので高岳と阿蘇火口の二手に分かれて登山することにした。私は険しい高岳コースを進むことにした。

 あいも変わらず虎ヶ峰、鷲ヶ峰は堂々とした姿でそびえたち、我々に感動を与えた。急坂の岩の上を細心の注意を払いながら一歩いっぽ確実に進む。一歩でも間違えれば一巻の終わりである。そこから少し登ると山で亡くなった者の慰霊碑がぽつんと立っていた。仲間たちは心の中で黙とうを捧げた。

 先頭を行く今日のメンバーの下界での顔は、私を含めて八百屋に美容師、お寺の住職さんと様々だ。しかし、皆共通して山を愛する人間である。それに何ら隔たりなんてない。出発して2時間。とうとう最後の難所を乗り越え、全員1592メートルの高岳に到着する。すばらしい阿蘇地方の雄大な景色と外輪山が迎えてくれたが、強風と霧で温度が下がり、さっきまで心地よかった風が急に手まで凍えさせた。

 しかし、仲間たちの顔は一往に山を征服した満足感で喜びに満ちあふれていた。(6月9日、佐賀県多久市朝日登山クラブ 沈成達)

 【コースとタイム】多久インター〜九重インター〜長者原〜仙酔峡〜高岳〜中岳〜火口口〜仙酔峡、7時間

[朝鮮新報 2003.6.20]