〈第25回在日朝鮮初級学校サッカー中央大会〉 白熱の3日間、躍動する「コマ」サッカー選手たち |
「コマ」(ちびっこ)サッカー選手たちの真夏の祭典−第25回在日朝鮮初級学校サッカー中央大会(主催=在日本朝鮮人蹴球協会、4〜6日茨城県ひたちなか市)は、生野初級(11人制)と川崎初級(8人制)の優勝で幕を閉じた。灼熱の太陽が照りつける中、3日間グラウンドを縦横に走り回り精いっぱいのプレーを見せた「コマ」選手たちは、喜びと悔しさをかみ締めながら、一夏の熱い思い出を小さい胸に刻んだ。(文・千貴裕、写真・盧琴順記者) 11人制
今大会で四半世紀の歴史を経た「コマ」サッカー大会。今年も例年に負けず、劣らず熱いドラマが繰り広げられた。 過去24回の大会、11人制競技(23回大会から8人制併設)1部でのこれまでの成績は、東西それぞれ12勝ずつ。数字的には互角だが、近年は西高東低の傾向が見られ、今大会は東日本勢の活躍が期待された。 しかし、今年も西日本勢の勢いはとどまるところを知らなかった。1部4強には生野、大阪第4、西大阪・堺・泉州合同の大阪勢が3つを占め、東では西東京第1が孤軍奮闘した。
晴れの決勝の舞台に駒を進めたのは、生野と西東京第1。東西の雄はともに今大会無失点で顔を合わせた。 双方とも攻守にバランスが取れたチーム。手に汗握る好ゲームが予想されたが、生野は立ち上がりから硬さの目立つ西東京第1の一瞬の隙を見逃さなかった。前半、立て続けに3得点を奪うと、後半にも攻撃の手を緩めず、4点を加点し、7−0で圧勝した。 今大会20得点、決勝でも6点を叩き込んだ主将の周祐慶君は、「みんなが最後まで走り続けた結果だ」と胸を張った。周君は今年度インターハイ・ボクシング競技で優勝した周太慶君の実弟。兄に負けないくらいの結果を出し、満足そうな笑みをこぼした。 また、「痛快な気分」と喜びを口にしたのは李昌受監督。「3年前に初優勝をした後、これから伝統を作り上げていこうとみんな頑張ってきた。ここ2年間は1部4位、3位、そして今年優勝と着実に伝統が作り上げられていることがうれしい」と語った。
今大会一番しんどかった試合は準決勝の西大阪・堺・泉州合同との試合。「互いに手の内を知っていてやりずらかった」(李監督)という。試合には勝ったが、そのことによって、逆に決勝では大阪府の代表として絶対負けられないという気持ちを監督のみならず、選手たちも強く持ったという。 「うちのスタイルはパスをつないでいくサッカー。日頃、選手たちにはパスをつなぐことは、心を通わせる事と教えている。今回の優勝は、選手みんなの心がひとつになった結果だ」と李監督は語った。 惜しくも通算3回目の優勝を逸した西東京第1の劉順植監督は、「実力以上に選手たちは頑張った。よく戦った」と労いの声をかけていた。 8人制
一方、8人制競技は、大阪福島の大会3連覇が注目された。 しかし、結果は1次、2次予選で圧倒的な強さを見せつけた川崎が横綱相撲の試合運びで連戦連勝。準決勝に続き川崎同士の対戦となった決勝でも昨年3位の南武を寄せ付けず試合を完全に掌握し、4−1で初優勝を飾った。 神奈川県下の学校が11人制、8人制大会の1部で優勝するのは初めてのこと。今まで神奈川の11人制1部準優勝が最高成績だった。 「選手たちをほめたい」と目を細める川崎の姜熙哲監督は勝因について、「普段の練習と団結力にある」と語る。当初、姜監督は11人制に登録する予定だったが、大会を前に生徒たちが自らの意志で「8人制に参加したい」との旨を伝え、同競技に参戦することになった。 決勝を控え、姜監督は選手たちに「ライバルは自分自身だ。自分たちの力を信じろ」とげきをとばしピッチに送り出したが、選手たちはその期待に見事応えた。 昨学年度まで8年間南武でサッカーを教え、今学年度から川崎に赴任した姜監督にとって南武との決勝には複雑な思いが交錯した。「両校選手たちは本当によく頑張った。これから共に切磋琢磨し、県下のサッカー発展のため力をつくしていきたい」と語った。 他方、惜しくも大魚を逃した南武。しかし、昨年よりも順位を1つ上げて、準優勝に輝いた。 姜泰鳳監督は、悔し涙をこらえながら「試合過程を通じ生徒たちの精神面での成長を見ることができたのが一番の財産。子供たちは、心をひとつにするという貴重な事を身につけることができたと思う。来年はもうひとつ上を目指して頑張りたい」と語った。 [朝鮮新報 2003.8.9] |