top_rogo.gif (16396 bytes)

〈第82回全国高校サッカー選手権〉 京都朝高サッカー部結成43年目、悲願の初出場果たした金栄周監督

 決勝戦前日の夜に泣いた。「当日は勝っても負けても、涙は流すまい」と思ったからだ。3年生とは足掛け6年、2人3脚で取り組んできた。その間、共に汗を流してきた日々を振り返ると、涙が止まらなかった。当然、勝ちたいという気持ちはいっぱいで、悔いのない試合をしてくれると信じていた。

 試合は前半、1−0でリード。後半早々に同点に追いつかれてからは重い顔つきになった。桂の猛攻撃が続いた。それでも選手たちを信じた。「押し込まれても必ず守り抜き、PK戦に持ち込まれる前に1点を取り勝つ」「冬場の体力トレーニングで培った『走り勝つ伝統のサッカー』を最後までする」、そう心の中で思った。

 延長後半9分、試合終了間際の1分前に決勝ゴールが決まった。終了のホイッスルを聞いた途端、緊張感は喜びへと変わった。ピッチで大の字になって喜びを表現した。

 京都生まれの34歳。京都朝高、朝大卒業後、91年から同校に赴任。サッカーは高級部で4年間、中級部で4年間教えた後、再び高級部で3年間教えた。現3年生とは足掛け6年の付き合いだ。サッカーだけではなく、学校生活も共にした。

 同部は今年で結成43年目。これまでの選手権府予選の記録はベスト8。現在、部員はわずか28人だ。

 昨年の選手権敗退後、新チームを結成した。7割が前チームで活躍したメンバー。それなりの経験も積んでいる。だが、1カ月以上、ボールに触れる練習はしなかった。学校前の坂道登り、グラウンドでのインターバルで体力、忍耐力をつけた。

 周囲やマスコミは「特別メニュー」のように思っているが、毎年のメニューだ。「一からのスタート」を意味する。チームにかける思いは毎年変わらない。

 そして迎えた夏のインターハイ予選。初戦は8〜9割押していたものの、泥沼と化したグラウンドコンディションも重なってあえなく敗退。涙をのんだ。

 チームはその時の悔しさをバネに大きく成長した。牙をむき出したのは夏の遠征を終えてからだ。

 「強い日本のチームに胸を借り、自分たちに足りないものを探し出し、自ら自分の役割を果たすようになった」と分析する。

 そして、今回の優勝の要因は「落ちない体力」と「チームワーク」という。

 また、選手らには「自らの努力」だけでなく、周りの多くの「支援」があっての自分たちであることも強調する。これまで、幾度も全国大会出場、優勝を目指し、果たせなくても、OB会などからはそのつど、「長い目で見てがんばっていこう」と励まされた。

 念願の全国大会出場の意義については、「すばらしい環境、そしていい選手を他から呼んでこなくても、できることを示したのでは」と強調する。

 今回、京都ナンバー1の座を手にしたが、それはあくまでも全国を目指すためのステップと心得ている。「全国大会では自前のプレー、勇猛果敢の精神で、まずは1勝を目標にチャレンジしていきたい」と目を輝かせた。(羅基哲記者)

[朝鮮新報 2003.11.18]