〈手記−体連50年史-12-〉 統一旗掲げ合同行進 |
20世紀最後のオリンピックは2000年9月、シドニーで史上最多の199の国、地域が参加して華やかに開催された。 その開会式、12万人収容のマンモス・スタジアムを揺るがした歴史的な北南選手団の合同入場行進が始まった。 忘れられぬシドニー
96番目、白地にブルーで朝鮮地図が描かれた「統一旗」を先頭に、北南選手団180人が堂々と競技場に入った。 オリンピック史上初めての歴史的な舞台に、朝鮮オリンピック選手団の一員として、私も役員に続く隊列の最前列で、南の選手団役員と肩をならべて参加していた。 北と南の旗手が掲げる「統一旗」が、この時ほど誇らしく頼もしく思われたことはない。 真昼のように輝くライトに照らしだされた競技場に足を踏み入れるや、スタンド総立ちの嵐のような拍手と大歓声を耳にし、私は背筋がぞくぞくし一瞬われを忘れるほどの感動と興奮を覚えた。統一「KOREA」が世界の人々からこれほどまでに歓迎されているのかと、目頭が熱くなるのを抑えることができなかった。 大歓声のなかで聞こえる「アリラン」のメロディーに合わせ力強く行進しながら、知らぬ間に私は両隣りの南の役員の手を強く握り、高く上げて大声援に応えていた。 テレビを観ているであろう在日同胞スポーツマンたちが、少しでも気付いてくれることを願いながら。 「本当に良かった!」「統一がこんなにすばらしいとは!」「朝鮮は一つだ!」。行進に参加した私たちは、このすばらしい時間を心から喜び満面に微笑をたたえながら話し合った。 ちなみに「KOREA」のプラカードを持ち、先頭で案内していたのは在豪同胞の女学生であった。 統一に向け確実に前進 北と南がこんなにも自然に一つになれるとは、6.15共同宣言前までは考えられなかったことである。 翌朝、カラー写真を1面トップに掲載しながらマスコミは「南北朝鮮が初の同時行進」「統一旗高々と和解のアピール」と、こぞって大書特筆したが、まさに北と南の民族和解と平和統一を願う強い意思を、全世界に伝える歴史的な行進だったと、今さらながら思う。 そしてソウルから、東京から、海外からやって来た同胞が在豪同胞と一緒になり、北南選手に熱い声援を送る姿には、本当にすがすがしいものがあった。 20世紀最後の五輪として、全世界が注目する北南朝鮮の歴史的な合同行進に参加できた私は、朝鮮の海外体育人として生涯最高の貴重な体験をした。 この北南選手団の合同行進は、釜山アジア大会、青森冬季アジア大会や大邱ユニバーシアード大会でも実現した。次のアテネ五輪でも共同入場が確認されている。 歴史的な6.15共同宣言から4年、今の北南交流、平和統一に向けての力強い前進とともに、スポーツの分野でも一歩一歩確実に前に向かって歩み始めていることを私は実感している。(琴栄進、在日本朝鮮人体育連合会理事長)(おわり) なお、17日に行われた体連第19期定期大会で、筆者は理事長から常任顧問になりました。 [朝鮮新報 2004.7.24] |