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在日コリアン医師 金萬有、輝きの半生、自らの手で

 東京都東部地域の基幹病院である西新井病院。昨年5月には創立50年を迎え、地域住民のお祝いを受けながら、盛大な記念式典と祝賀宴が都内のホテルで行われた。

 さらに同病院の創立者で、医療法人社団成和会理事長・西新井病院金萬有院長は今年、卒寿(90)を迎えた。

 本書はその金萬有院長の波乱万丈の一代記であり、同病院の激動の半世を綴って、読み応えがある。

 本書で金さんは当時、深刻な結核対策のために地域住民の「ぜひ病院を」の強い声に押されて開院したエピソードに触れ、3大方針@朝・日親善A民主的医療B社会福祉をモットーに掲げ、地域に根ざした医療を開花させたと誇らかに語った。

 また、昨春、院長の長年の夢であった介護老人保健施設「むくげのいえ」もオープン。「永遠に高貴でありたいという高齢者の熱い思いをこめて」院長自身が命名した秘話も明らかにされている。

 異国の過酷な状況の中で、「無」から「有」を生み出した金さんの夢は、86年、金日成主席の配慮の下、平壌に東洋一のスケールで総合病院をオープンさせ、大きく花開いた。

 終身現役の類いまれな情熱と献身の半生。今夏、東京都内で開かれた卒寿を祝う会で、梁守政在日本朝鮮商工連合会前会長がその歩みを「われわれ在日同胞の宝」だと称えた。

 金さんは半生を振り返って「まず、民族ですね。それから地球、地球とは人類のこと。そして自分が生まれた故郷のこと、故郷を忘れた人間は浮き草同然。我々の2、3世はこの点がどうしても弱いと思う。故郷に対する愛情というのは理屈なしなんです。祖国愛、民族愛を決して忘れないようにして欲しい」としみじみ語る。

 21世紀に入っても、戦火が絶えない世界を見る時、この言葉は、祖国を離れ、生きねばならなかった人の座右の銘として、我々が心に刻むべき言葉でもあろう。

 苦難を超え、自らの運命を自らの手で切り開いてきた人の輝きの半生に大きな拍手を!(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2004.10.25]